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「もしかしてつまらない?」


佐々木まぐろくんなる男子はこの一言にびくりと肩を震わすとびっくりした(ような)口元をいつものはぐらかすようなものに戻してさあ、と応えた。


「それを聞かれたのは3回目だよ」


そんなに気怠そうに見えるかい?と両手を肩元で反らせてクエスチョンマークを飛ばした。

にかっと見えた白い歯はさっきの驚きを無かったことにしたようだ。


「それってりんごちゃんとりすせんぱいでしょ」


「んー?バレちゃったか」


だって佐々木まぐろくん、物理部(だったかは確かじゃないけど)の人としか居るところ見ないよ、と返せばまあねって返ってきた。


「やっぱり何でもソツなくこなしちゃう天性の人ってつまんないもんなのか」


「そう見えるならそれでいいよ」


あながち間違いでもないしねと、やっぱり受け身でどちらともとれる言葉で流す佐々木くんに私は少しもう少し熱くなれよ!的なキャラでもないことを感じたりした。言いはしないけども。


「というか正直ナマエちゃんと喋るのって両の手で数えられる位しかないんだけど」


「うん、それは自負してる」


自負って少し使い方違うんじゃない、まあいいやって繋いでからまた話を続ける佐々木くん。

「そんなに僕の性質を見抜いてどうするの?」


「まあ気になっただけだからさ、趣味だよ」


「ふうん」


私も佐々木くんの真似事で手をひらりと反って流してみたら佐々木くんは真似しないでよ、って笑った。笑うと益々胡散臭い。


そして手を反らしたときにぴらりと音がして佐々木くんに話しかけた目的のそれが目に入った。
ああそうだったや。



「佐々木くんが私たちのレベルに合わせてやるとつまらないものなのは何となく想像はつくんだけど、でも提出する課題は遊ばないでやった方が良いよ」


ぴらりと表の面を見せた原稿用紙には赤い字で"句読点代わりに★を使うのはやめましょう"と踊っていた。


「文はなかなかおもしろいのになんで★なのかわからないから直接言って置いてって先生に言われたからってだけなんだよね」


まあそれもキミのいつもの世渡り術なのかな?と問うと佐々木くんはあっ、って声を漏らしただけだった。


案外うっかり屋さんなのか。






2012/05/12/
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シニカルを目指したいまぐろくん
所謂かっこつけ系男子


そして最近まぐろくんを名字呼びするのにはまった。
前回も佐々木呼びだったし。

 
 
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