私と佐々木についての関係はそこそこ普通だ。ただちょっと佐々木がうちのお母さんとかと仲がいいだけ。至って普通だ。
そして部活は私が運動部、奴が物理…要するに理系部だから部活も違えば帰宅時間も違う訳だから特にいつも一緒にいる訳ではなかったりする。
佐々木の方が帰宅時間が早い。だからこそめんどうなことが起こる。
「ただいま」
「おかえり。お邪魔してるよ★」
こういうことだ。
「お邪魔されてたよ」
「訪ねたらいないからおばさんに上がらせてもらったんだけど、おばさんお買い物に行っちゃったや」
「…さいでっか」
流石に信用しすぎだお母さん。
ちょこんと玄関に座る佐々木にまあまあこんなとこに居ないで上がりなよ★とか言われて蹴らなかった私を私は誉めたい。
「お疲れ様★」
「部も疲れたけど現在進行形で君の言うお疲れが続いてるんだけどね」
「おやおや?それはタイヘン だ。お風呂洗っておいたから汗を流しちゃいなよ」
お疲れの原因はお前だと言わんばかりに佐々木を見やると、ちょうどお湯たまってるハズだよ、と誇らしげに口端を緩めた。
衝撃。
佐々木に帰ってきたらちょうど汗を流せるようお風呂洗われてた。
「前々から思ってたけど佐々木女子力高すぎじゃないの」
「んー?まあ ね★
ナマエちゃんを養える程度だけど」
佐々木は主婦にでもなるつもりなのかと思っていると、主婦じゃなくて主夫かなと返ってきた。脳内を読むな、脳内を。
「あ、そういえばナマエちゃん帰り濡れなかった?」
「帰り?いや別に」
雨なんか降ったことすら知らなかった。
佐々木はほっとしたようにまた口端を緩めた。なんだかんだいって佐々木の緩い顔が見てるとほっとする気がした。
いやまあ怒ってる顔より緩い顔の方が当たり前に安心するんだろうから普通か。
「それだけ?」
「うん、それだけ。こっちはちょっと降ったから気になったんだ」
「じゃあ有り難くお風呂入らせてもらうわ」
「じゃあ僕はナマエちゃんの顔も見れたことだし帰るとしますか」
「ん、お風呂さんきゅ」
とりあえずぱたぱたと玄関まで佐々木を送る。
ドアノブを回した佐々木はあ、と声を漏らし振り向いた。
「あ、言い忘れてたけど雨降ったから濡れないように勝手に洗濯物入れちゃったからおばさんに失礼しましたって言っておいてね」
「ほんと何者なんだ佐々木」
「あと最後に捨て台詞」
靴を履き、鞄をきちんと持ってドアを開けた。半分くらい身体を出して佐々木はその"捨て台詞"を吐いた。
「ナマエちゃんもう少し大人っぽい下着でもいいと思うよ」
「なっ…!?」
私が言葉を発するよりも早く佐々木は逃げた。そりゃあもうあっという間だった。
真に捨て台詞、正に捨て台詞。
そして遠くの方からまた明日ね、と声が聞こえた気がしたので佐々木に聞こえるかは知らないがふざけんなと叫んでおいた。
明日会ったらぶっとばそう。
*2012/04/15
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運動部系女の子(?)と佐々木主夫。
ちなみにイメージソングはキッチンでカッパなあの曲。
きっとお風呂を開けるとためただけじゃなくて薔薇風呂とかで佐々木の底知れなさにびっくりするとかも考えたけど省いた。
佐々木主夫とかなみこ得。