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握りしめた塊が頬にのめり込んだ。避けられるはずはないけど、避けられたとしても避けないだろうなぁ…なんて頭は呑気に考えている。
だって下は岩場だ。こんな地面に拳をぶつけたらいくら男の子でも痛いだろうし。


体制は私が下で彼が上。
上は片手で肩を押さえてもう片手で頬を殴った。背は冷たい岩場に貼り付くようで温度を持っていかれた。

ちらりと見やれば、殴ったのはシェゾの方なのにシェゾの方が泣きそうだった。
頬はようやくじんじんと熱を持ち始める。


「…なんでなんだよ、」


「…シェゾ」


「なんでそんな他人ごとなんだよ…
なんで居なくなるかもしれないのに笑ってられんだよ………!」


どうしょう、泣かせてしまった。複雑だ。
頬を伝った涙を手で撫でればその体勢のままで強烈な力で抱き締められた。
肩に水がぽたぽたと冷たい。


「なんで…っ、普通に笑ってられんだ、よ…!」


「……ごめん」

しゃくりあげるシェゾを子供を宥める様に背を叩いた。
腕に籠もる力はどんどん強くなっていく。背骨がぽきぽきと悲鳴をあげた。

「おれがっ、いなくなっても、っ…お前は…平気なのかよっ…」


「…平気じゃない。けど、シェゾならずっと側に居てくれる気がしてたから」


「……ばかやろう」


崩れた彼からいつもの自信家で子供っぽい面影なんて見つけられなくて、ただただ受け止めるだけしか出来ない私がいる。



現代っ子の憂鬱


どこか他人ごとに考えてた。
きっと彼はどこにもいかないしいつでも洞窟に向かえば会えるんだと錯覚してた。
彼は元の世界があって、今此処に居るのは奇跡で、不安定なんだ。

そうして奇跡を当たり前と安心する私が彼を××××た。






*2012/03/18
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おかえりまぐろくん書いて思いついたネタ。

うつメンタルシェゾさん。
しかしシェゾさん書きたいのに口調がよくわからない罠

 
 
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