今私は危機的状況である。
だからこそそれに弁解させて欲しい。
長く続けた習慣や癖はなかなか直るものじゃない。同じく短くはない時間がかかるはずだ。
レムレスがお菓子を止めるほど難しくはないものの、シグが授業中に居眠りをしないほどに難しいと思う。
うん、難しいこと言っても要するにあれ、無理です!
クルーク君!あ、また言ってしまった…!
* * *
たくさんの本とたくさんの棚が並ぶこの部屋。
この部屋の主であるクルークくんは並ぶ本読み尽くし、把握しているようですぐ今日の授業の内容の参考書を棚から取り出した。
私もそれにならい、復習に使えそうな参考書を棚から引っ張り出した。
「じゃあこの参考書借りるねクルークくん」
「ねえ、そのクルークくんって止めない?クルークでいいよ」
他人行儀だし、キミ他の奴らにもくん付けじゃないか…もうそんな間柄じゃないだろ、と眼鏡を押し上げて呟く。
確かに…恥ずかしいけど私達は所謂カップルというやつだ。
でもなぁ…
「えー、すぐには無理だよ、クルークくん。大分前からくん付けで呼んでたからくん付けで慣れちゃったし…」
「ほら、また」
「あ…」
「じゃあ、くん付けしないようにゲームしない?」
「えー?楽しいやつならいいよ」
「うん、楽しいと思う。
じゃあ決まりだな」
この時はまだ気づかなかった。クルークくんが怪しくにやにや笑ってることに。
「ナマエがくん付けで3回呼んだら、罰ゲームね。
ちなみに、既に2回アウトだから」
「え、ずる!それは換算しないでしょ普通!クルークく…クルークが滅茶苦茶有利じゃん!」
「そりゃあそうじゃないと楽しくないだろ?
ほら、もう3回目」
にやりと笑ってぐっと距離を縮めた。がっちり肩を捕まれてはもう逃げられない。
この悪い笑みのときのクルークくんから逃げられたことなんて一度もないけど。
「じゃあ今回の罰ゲームは、ナマエからキスで」
「え、なにそれ無理だって!」
「ほら、いつでもどうぞ?
僕はキミがやるまで離さないからね」
勝ち誇った顔で私を見つめるクルークく…クルークに私の顔は更に熱くなる。
うわああああ、恥ずかしい!
無理だって無理だよ!
今いうことじゃないけど実はクルークけっこうイケメンなんだよ!あれ磨けばどうたらってやつ。それがさ、なんていうか挑戦的な悪い顔で真っ正面から誘ってるって、このチキンハートナマエが平静を保ってられるわけがない!
「ナマエ大丈夫?顔真っ赤だけど?」
「ううううるさいよ!」
キミのせいで大丈夫じゃない!
ああもう駄目だ!もうどうにでもなれ!なりやがれ!
頭が雑念でいっぱいになりながら勢いづいてクルークの唇と接触、そしてすぐ離れた。
だって恥ずかしいし!
クルークはちょっと驚いたような顔をしてからまたにやにやと笑いだす。
「ナマエにしてはよくできたんじゃない?」
「う、うるさい!直ちに私を解放してから5分ほどほっておいて欲しい……!」
「やだね。こんな面白いナマエを放っておくわけないだろ」
それに罰ゲームだけど上手く出来たなら“ご褒美”あげなきゃだしね、と私の唇を人差し指で撫でた。
ああ、もう今日は勉強どころじゃあないな。
口の端がにやりと歪んで悪巧み
*2012/03/07
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イケメンクルーク略してイケクル。
イケクル過ぎた。