short | ナノ
奴は最近頭がぼーっとするだとか記憶が薄いとか、なんかおかしいんだけどキミの仕業かい?と呟いた。
それはそうだろう。
どんどん貴様の身体を支配する時間が増えているのだから。
また黒い眠りに堕ちた紫色の魂に(本人には聞こえていないだろうが)皮肉を込めて感謝の言葉を呟いた。
side
――ナマエは僕のものだからキミなんかには渡さないよ。
満足そうに上に追いやった私を見上げて嘲笑ったクルークのその言葉だけが頭でぐるぐる回った。
まったくなめられたものだと、力の優劣で言えば、身体の支配でいえば私が勝っているというのに。
考えを募らせるほどにいらいらと頭に血が上るようだった。
横で静かに本を読んでいたナマエをちらりと見やると此方にはまったく気づかずに頁を進めている。
ぐっ、とナマエの肩を掴み此方へ強引に引き寄せ、後ろから包み込むように腕を絡ませた。
ナマエはびくりと肩を震わせたがそのまま何も言わなかった。
「お前は私のものだ」
自分が思うよりも低い声が出ていたことに少し驚いた。
不機嫌ともとれたであろうその声にナマエは不安げに此方へ目線を寄越した。
ナマエを閉じ込める腕に力を込めて同じ言葉を繰り返す。
「お前は私のものだ。
誰にも渡さない」
そのまま後ろから首に噛みつく。
この身体の主が付けたのであろう傷とは反対側に痕を付けた。
正面から向き合い何か言いたげな口は言葉を紡ぐ前に塞いだ。
絡めた指は冷たい私の指と比例するように熱を増していった。
*2012/02/08
素材:誤爆