「…勝利は分かってたわ」
「…ばたんきゅー」
「今行くわ…せんぱい…!」
「ちょっと、フェーリ待って!助けてから去って!
待って!あー…行っちゃった…」
フェーリは私をばきべこに叩き潰してそのまま去ってしまった。ぷよの山に埋まったままで何も出来ない私を残して。
いつもの勝負で、相手がアミティとかリデルとかだったら積み上げられたぷよから救出してくれるのになぁ……。
どうしょう、本格的に困ったぞ…
「あれー?また勝負で負けてぷよに埋もれて動けない困ったさんが居るなぁ」
「……クルーク」
にやにやしながら私を見下すメガネ君はさも楽しそうに近づいてくる。
メガネがキラリと反射する。
「無様だね。まあキミにはお似合いの格好だと思うけどね」
「うん、もう何でもいいから出して…」
「嫌だね。
もっと言い方を変えれば考えなくも無いけど…?」
「うぐぐぐ…
助けて下さいクルークさん…」
「さん?」
「……クルークさま」
「まあそこまで言うなら仕様がないね!」
「(…言わせたんでしょうが)ありがとう」
ようやくしゃがんで此方の目線に合わせた。
伸ばした手は私の伸ばす手には行かずに私の頬へと伸ばされる。
何をするのかと目をつぶったけど予想外に優しく触れた。
「……まったく、どうすればこんなに汚れるんだい?
キミも一応女の子だろ、土付いてるよ…まったくもう」
ぶつぶつ言いながらも、ぐしぐしと土を拭ってくれた。
「どうしたの、優しいね」
「ふん、こんな落ちこぼれさんに構ってやるのは僕くらいだからね。
感謝しろよ」
「ありがとう感謝しとくよ」
ふふん、と得意気に笑うクルークに自然と笑みがこぼれた。
嫌味たらしく見えるけど、ちゃんと向き合ってみればなかなか可愛いと思うんだ。
「何笑ってるんだ!
今笑うところは何もないぞ!」
「いや。クルークって一見嫌味たらしく見えるけど意外と可愛いところがあるよな、って思ってさ」
「なっ……!?
なななな何を言ってるんだ!
僕は知的でスマートな優等生だぞ!可愛いところなんてっ…!」
「そういうトコだよ」
にやにやとクルークを見上げれば、ますます顔が赤くなる。
体制的にはだんぜん不利だけど、形勢逆転だねクルーク。
「僕は可愛くなんてないっ…!
うるさいっ、ナマエなんてこうしてやる!」
思いっきり髪の毛をぐしゃぐしゃにするクルーク。
それでも笑いは込み上げてきて、暫くクルークに弄くられつつ笑うという奇妙な時間が続いていた。
*20120105