遙凛 (3/6)
赤く色づいたら

帰り道の途中で雨が降ってきた。真琴の折り畳み傘を二人で分け合うが、どうしても両者ともに肩を濡らしてしまう。
わざわざ家に着いてきてもらった。ありがとな、と礼を言えば、真琴は目をぱちくりさせて柔らかく微笑んで「どういたしまして」と言った。
玄関を開けようとしたら、鍵が掛かってないことに気づいた。まあ田舎だし、家にはあまり貴重品は置いていない。
しかし不審者が居れば話は別だ。警戒しながら恐る恐る開けると、見慣れた革靴が乱雑に脱いであった。凛のだった。

「何してんだ」
「おかえり」
「……ただいま」
「明日は創立記念日だから、泊まりに来た。アイも実家に帰省してたし」

ちらちらとこちらの顔色を伺うように見る凛を見て、素直に会いたかったとか、寂しかったとか言えばいいのにと思った。
きっと思っていても言えないのだろうけど。
とにかく濡れた制服を脱ぎたい、身体を温めたい。俺は凛への返答をしないまま、風呂場に向かうと焦った様子で着いてきた。

「っ、もしかして怒ってんのかよ…?」
「別に」
「……悪かった」
「…。凛も風呂に入るか?」
「はあ!?」
「寒いから」
「…いや、いいわ。お前と入ったら逆上せる」

そういえば一度だけ一緒に入ったら、凛は堪えきれなくて逆上せてしまったんだっけ。
あの時のことを思い出したのか、苦い顔をする奴に「今日はいい風呂の日なのに」と呟いた。すると、うーと唸り出して白旗を上げた。

「……今日だけ、だからな」
「わかった。逆上せないうちに上がるからな」
「ムカつく…」
「じゃあ今から湯を溜める」
「おー」

この前は行為まで達しなかったので、今日こそは逆上せない内に実行しよう。
そう心に決めてスポンジに洗剤を垂らした。

<<prev  next>>
[back]
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -