遙凛 (5/6)
灰色な答え

ハルと恋人になったはいいが、あまり変化がない。奴はいつものようにぼーっとして何を考えてるのやら。興味すらわかねえけど。

『それって付き合ってるんですか?』

と、アイは丸い目を更に丸くして首を傾げた。俺もそう思っていた。興味も何もない相手と恋仲だと言えるのか。
答えは相手に聞くのが手っ取り早い。俺は次の日、金曜日に外出届を出した。

「よぉ、ハル」
「凛…?どうした」
「……まあ、ちょっとな」
「ふうん…」

言葉数が少ないまま会話は途切れ、その間に玄関で靴を脱いだ。ちゃんと踵を付けなきゃハルがうるさいから、しっかりとして。
居間に通されると、「そこで待ってろ」と客人扱いだ。手持ちぶさたになり何かないかと部屋を見渡すが特になし。つまんねえの。
唯一興味が惹かれたのが写真立てだ。一つしかないそれには、幼い俺達が笑顔で写っていた。もちろんハルを除いて。

「ん、お茶」
「サンキュ。なあ、これ…まだ持ってたのか?」
「持ってなかった。それは…スイミングクラブの壁にあった写真」
「なるほどな」

また会話が途切れた。アイや部長と話していても途切れることは無いのに、何故だ。
ハルはそれを気にも留めずに悠長に構えて、茶をしばいている。俺もそれに倣うように座って、湯飲みを握る。

「〜〜〜っ、あっつ…!」
「大丈夫か、凛?」
「平気だ…。くそ、あちい……」
「息を吹きかけずに飲むから」
「……チッ」
「舌、出して」

は?ハルは俺の顎を掴み、そう言い放った。ここでそれかよ。
何となく奴の青い目に逆らえず、おずおずと舌を出す。すると顔を近づけてきて、薄い舌が俺の舌を舐めてきた。
驚いて引っ込めれば、あの青い虹彩が非難信号を出してくる。仕方なく出してやると、あの冷たいような熱いようなよく分からない温度で包み込んでくる。

「ふ…ハル、も…いいから」
「…そうか」
「……。ていうか、普通舌を火傷したら氷とか持ってくるだろ」

未だに火照っている顔を誤魔化すために批判めいた言葉で言えば、ハルは少し拗ねたような口調で言ってきた。

「少しでも早く…凛の火傷を癒したかったから」
「……嘘だろ」
「どっちでもいいだろ。それより…続きをした方がいいのか?」

にやり、とハルが意地悪な笑みで俺の下半身を指した。ああ畜生、バレちまったか。

(こうして俺はまた終わりの見えぬ悩みに頭を抱えるのだ)

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