遙凛 (6/6)
零れ落ちる

出会ってから2ヶ月しか経っていなかったのに、俺と凛は結ばれた。
彼が異国へと旅立つその日に、俺から言ってしまったのだ。本当は隠しておくつもりだった恋心を。
黒い帽子を目深にかぶっていた凛は、「離れるのが寂しくなった」と泣き出してしまった。

懐かしくも甘い思い出。しかしながら一年後に再会した凛は暗い表情で、何か思い詰めている様子だった。
彼方に行っても手紙を書くと言っていたのにも関わらず、彼は最初の一、二通しか送って来なかった。
アイツ、飽き性だったからな。そう自分を納得させて自己完結していた。だが、実際に顔を合わせるとやはりそれは違うと確信を持った。きっと何か押し殺している。

『…勝負、しようぜ』

あの暗い凛の目を、俺は一生忘れないと思う。彼の目に映る俺は怪訝そうな顔をしながらも頷いた。
結果的にそれは彼を傷つける原因になった。三度目の凛の泣き顔。もう泣かせたくはなかったのに。ぐらぐらと歪む視界で、ただ呆然と立ちすくんでいた。

そして今年の秋に、二度目の告白をした。ムードもロマンチックもへったくれもない俺の家の縁側で。
寝転んでいた凛は起き上がり、震える声で本当に?と呟いた。肯定するように頷いたら、座っていた俺に彼が抱きついてきた。

「凛、また泣くのか」
「…っ、もう、泣かねえよ……。ガキじゃあるまいし」
「…嘘つき。今にも泣きそうだ」
「ふッ、っう…だってハルが言うから…!」

凛はあの日、空港で泣いた時みたいにボタボタと涙を溢した。手を濡らす液体はとても熱くて、コイツの熱が逃げてしまっているのではないかと心配になった。
ぐすぐす鼻をすする彼にティッシュを一枚やれば、小さな声で「…ありがとな」とぶっきらぼうに礼を言われた。

「凛の泣き顔、もう見たくないから泣くな」
「はあ?泣かせてんのはソッチだろ」
「……そうだけど」
「……。よし、次泣くときも嬉し涙にしろよな」

そう言って凛は俺の膝の上に頭を乗せた。まったく、俺は見たくないというのに。我が侭だと俺は彼の髪をすいた。

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