今日は女の子も男の子もドキドキのバレンタインデー
…なんて、なくなってしまえばいいと思うよ。うん

「チョコ欲しい!けどあげるのは嫌だ」
「お前それでも女かよ」

両手いっぱいの紙袋にチョコを溢れさせながら現れた猩影になまえはウンザリした顔を見せた

「見たまんま女だよ、猩影には私が男に見えるの?」
「いや、ま…ぁ女だよな」
「なにそれ普通に女だし、乙女の部類なんですけど」
「それはねぇな」

ゲシッ「いっ…てぇ」

猩影の返答になまえは素直にムカついたので脛を蹴ってやった

「お前ガサツすぎ、もう少し大人しくしてろよ」
「すみませんねガサツな女で」

人の気もしらないでこの野郎

なまえは猩影にバレない程度に恨めしそうな視線を送った

そんなに沢山のチョコ一体どうするのか、くれた全員に律儀にお返しをするのか、私も結局他の女と変わらないのか、あげれば美味いと褒めてくれるのか、考えれば考えるほど苦しくなって逃げたくなって…

「なんでココは日本なの…っていうか世界の常識は逆だよ逆」
「ひねくれてんな」
「ふんっ」

何も悪くない猩影を相手にうだうだと愚痴りつくし、机に突っ伏していると不思議なことが起こった

「なまえーちょっといい?」

隣のクラスの女友達がドアから顔を出して手招きしていた

「いやぁ実はさ、頼みというかお願いというか…」

なんだ猩影にチョコを渡してほしいのか、と在り来たりに考えて切なくなった

けれど要件はそうではなくて、

「なまえにチョコを渡したいっていう子がうちのクラスにいてね、ほらアンタは逆チョコ派で有名だったし」
「え、まじで!」
「まじまじ、大マジ」

黙ってたらあんたが学年断トツで綺麗なんだから

と、お世辞を貰い浮かれた私はついて行こうとした

「待てなまえ」
「あ、猩影!聞いてよ、私にチョコくれる人いるんだって〜」
「…よかったな」
「うんってことで行ってくる」

意気揚々に向かおうとしても、猩影は手首を掴んだ力を緩めてはくれなかった

「猩影?」

次第に二人の間を流れる空気に気まずくなって声をかけてみるも口を噤んでひたすら目を見る猩影に、恥ずかしくなって耐えきれなくなって視線をあちらこちらにさ迷わせた

「なまえ」
「な、なに?」

普段と違って初めてみる猩影の真剣な表情に、なまえはグッと息を呑みこんだ

「…俺がお前にチョコをやるから俺以外からは絶対に貰うな」

その意味を理解する頃には互いに真っ赤になっていた





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