「なぁなまえ、今日は何の日か知って…」
「さぁ知らないなぁ、じゃあね鯉伴」
「いや待て」
「待たない」

学校から帰宅途中、変な男もとい鯉伴と名乗る妖怪に道を塞がれてしまった

なんでもバレンタインのチョコを要求してきているのは間違いない

が、面倒なので私は知らないフリをする事に決めた

「今日はほら、チョコ」
「あ、急いで帰らないとドラマ終わっちゃう!じゃっ」
「それなら録画ボタン押してきてやったぜ」
「しね」
「生きる」

今のこのやり取りにキリはないと分かってはいるが、何分気に食わないヤツなのでチョコは初めから用意していない

足止めされても迷惑なだけだ

「なまえ、話があるんだ」
「私にはない!帰る」
「待て待て」
「離せ変態、妊娠するだろ」
「それ信じてんのか…?」
「いんや、でもお前ならあり得ると信じてる」
「………」

なんせこの色男は遊び人だと聞いている

そんなヤツがわざわざ自分に何の用だと言いたいわけだ、絡まれるとお姉さん方からの視線が痛いわ呼び出し寸前だわ損はあっても得はない

だからハッキリ言うと関わりたくない

「とにかく俺の話を聞いてくれ、ってか聞け」
「最低」
「……今日はだな、その、ばれんたいんってやつだろ?」
「へぇ〜そうなんだ、じゃ」
「っで、これやるわ」
「…は?」

帰ろうとすれば肩を掴まれて決して大きくはない紙袋を手渡された

これにはなまえも唖然とした

「話はそんだけだ、じゃあな」

鯉伴が去ったあともなまえはキツネに摘まれた気分で立ち尽くしていた

「義理か?本命か?…全く分からん」

なまえはホワイトデーにお返しくらい用意してやるかとチョコを摘みながら考えた





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