「黒羽丸ぅー黒羽丸ぅーいないの?」
屋敷の中を捜してみるも姿も影も見付からない
パトロールだろうかとなまえはしょんぼり項垂れながら他の妖怪たちに義理チョコを配ることにした
「毛倡妓ー氷麗ー首無ー…」
ホイホイと見つけては軽く言葉を交わしてチョコを渡す
しかし本家は数が多く、なかなか配り終わらない
いっそみんなが集まる夕餉で渡せばいいかとも考えたが、そうなると欲張りなヤツが少なからず出てくることは目に見えているため敢え無く却下
いっそ部屋の前で並んでくれればいいのに…と大きな溜め息がひとつ零れた
「ん?なまえ様?」 「あ、トサちゃんだ」
一般家庭には広すぎるだろう趣ある庭にトサカ丸が降りてきた
「何してたんだ?」 「今日はバレンタインだから、みんなにチョコを配ってるの。はい、トサちゃんの分」 「おお!さんきゅー」 「お仕事お疲れ様」
ラッキーとハシャぎながらチョコを頬張る姿はまるで子ども
「義姉さん」 「あ、ささ美ちゃーん!待ってたよっ」
遅れてやって来たささ美になまえはぎゅうっと抱き付いた
ささ美もそれは嬉しいのか恥ずかしそうに腕を回す…所で何かを思い出したように顔を青白くさせた
「義姉さん、大変なんだっ」 「え、どうしたの?」 「黒羽丸が義姉さんにヤキモチを妬いていじけてしまった」 「……は?」 「すぐに向かってほしい」
切羽詰まったように急かされ、なまえは黒羽丸用のチョコを片手に黒羽丸の部屋に向かった
すると不貞腐れた感のある黒羽丸がいて、思わず笑ってしまい、さらに機嫌を損ねてしまった
「ねー黒羽丸、機嫌直してよ」 「機嫌が悪いわけではない」 「チョコいらないの?」 「いる…が、それは、その…」
バッと一瞬目が合うも逸らされチラチラと盗み見をされる
なまえはその姿にまた笑ってしまいそうになるのを心の内で必死に堪えた
「これは黒羽丸用の他とは違う豪華なチョコです」
それを聞いた黒羽丸はおずおずと手を差し出した
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