沢田に伝える



ある雨の日。リボーンさんの提案で宴会をやることになった私達ボンゴレファミリー。梅雨のじめじめを吹き飛ばすんだ、みたいなこと言っていたが相変わらずよく分からない人だ。宴会と言っても私やランボくん達はまだ未成年なので雰囲気だけでもとジンジャーエールを飲みながら参加していた。

「なまえ〜」
「うわ酒くさ」
「名字、今は10代目から離れてろ 絡み酒だから」
「そうします ありがとうございます獄寺さん」

ぎゅーっと抱き着いてきた沢田さんから獄寺さんに救ってもらった。絡み酒な沢田さんも可愛いけどね。獄寺さん優しいね。急に隣に体温を感じて振り向くと顔を赤くして笑顔な山本さん。…うん?なんかおかしい。

「名字好きなのなー」
「え、あ、はい ありがとうございます」
「ははっ 可愛いー」
「…獄寺さーん」
「ああ?…って、おい 山本お前またビール飲んだのか?」
「ん?そこに置いてあった麦茶飲んだだけだぜ?」
「それがビールだって言ってんだよこのバカ!お前はもう寝ろ!ガキのくせに酒飲んでんじゃねえよ!」
「ガキじゃねえよ 酒くらいいくらでも飲める」
「だから飲むなって!ああ、もう、名字、あっち行ってろ」
「はーい」

さすが親友。扱いに慣れていますな。ていうか山本さんはお酒ダメだったのか。日本酒とか水みたいに飲めそうなのに。ギャップ狙いか、あざとい。さすが山本さん。とことこと歩いて行くと佐藤さんとディーノさんとスパナさんとリボーンさんが静かに座っていた。おっと、ここはお酒飲まない人達かな。

「お、なまえ 大丈夫だったか」
「はあ、まあ …あれ」
「ん?」
「佐藤さんって未成年じゃ」
「「「ない」」」
「…そうですか」

いつだか沢田さんが高校卒業してなんとかかんとかって言ってたけど気のせいだったのか。妙に一致団結してるのがちょっと引っかかるけどまあいいや。スパナさんとディーノさんの間が少し空いていたのでお邪魔して私もちびちびジンジャーエールを飲んだ。お酒を飲んでいないのかと思ったこのグループはすでにワインを3本あけていた。そういえば全員外人さんですね。お酒にとても強そう。スパナさんはワインと駄菓子を一緒に食べてるんだけど食べ合わせとか気にしないのかな、しないんだろうね。

「名字さん」
「はい」
「スルメイカ食べる?」
「食べます!」
「…おつまみ好きなの?」
「そこらへんの女子高生よりかは」
「そっか」

佐藤さんにスルメイカをもらいスパナさんにイカソーメンをもらいディーノさんに枝豆をもらいリボーンさんにワインをもらった、ってこら。リボーンさんなに笑顔でお酒渡してんですか。さっき女子高生って言ったの聞いてなかったんですか。ワインは断り机の上のおつまみを食べていると4人に頭を撫でられた。な、なんだ。

「なまえはいい子だな」
「ジンジャーエールもっといるか?」
「名字さんってちびだね」
「ワイン飲めよ、ほら」

うん、約2名は無視で良いかな。一人は確実に私の身長を縮めるために頭を押さえてやがる。一人は相変わらずワインを勧めてくるし。未成年って言ってんでしょうが!

「名字」
「あ、雲雀さん 酒盛りしないんですか」
「騒がしいのは嫌いなんだ」
「ふーん 何か用ですか?」
「沢田が名前を呼んでいた 部屋で寝てるから行ってあげて」
「なぜ雲雀さんがそんなことを」
「…別に」

沢田さんを介抱してたのか優しいな。脇腹をつつくとすごく嫌そうな顔をされた。まあいつものことだから今さら気にしない!ディーノさんがにやにやしながら私達を見ているのも気にせず、雲雀さんの言う通り部屋に向かう。私が行ったって何ができるわけでもないけど、そこらへん良いのかな。良いよねどうでも。

「失礼しまーす…」

そろそろと部屋に無断で入り丸く膨らんでいるベッドに近づいた。小さな寝息が聞こえるから、多分寝ているんだろう。布団を少しめくり顔だけ出しておいた。もわっとお酒の臭いがしたことには目をつむっておいてあげてもいいですよ。

「なまえ…」
「…本当に呼んでる」

驚いたけれど沢田さんは私を気にかけてくれてるし、何か心配事でもあったのかもしれない。優しい人はなんでも背負い込むのが悪いとこだよね、頼ってくれて良いのに。

「私は、幸せですよ」

あなたたちと出会えて幸せで堪らないんです。手を握り呟くと、沢田さんが穏やかに微笑んだ気がした。



君に、伝える

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