微暖湯 | ナノ

羊を数える。



おかしい。こんな展開になるなんて聞いてない。私はスパナさんプラスその他たくさんの人達と楽しくにこにこ笑う人生を送りたいと思っていたのに。なんだってこう、みんなしてフラグを立てていくのか。へし折るよ?へし折っちゃうよ?ああまじでもう、とりあえず獄寺さん今日おやつくれないと許さないですからね…。

「歩、暇だったらこれやっといて あと表面直すだけ」
「…はい、わかりました」
「…元気ない?」
「…いいえ、大丈夫です」
「…そう」

頭こんがらがり過ぎて訳わかんなくなってきた。頭も痛いし、知恵熱出たかな。スパナさんにもらった仕事をするため、フラーっと工房の中を歩き自分の机まで行ったと思ったら、佐藤さんがいた。あれー、佐藤さん場所違くないですか?まあそんなことはなくて、私が方向を間違えただけだったのだけれど。

「…水島さん、どうかした?」
「佐藤さん…あ、れ?…ああ、佐藤さんか」
「…入江さん、水島さん具合悪いみたいなんで部屋連れてって良いですか 寝てもなおんないかもしれないスけど」
「…うん、分かった 頼んだよ佐藤くん」

え?私まだ仕事残ってるんですけど…?言おうと思ったのに佐藤さんに強く腕を引かれ、何も言えないまま工房を出た。やっぱり佐藤さんは強引な人ですねー。階段を上るにもフラフラ危ない私を、佐藤さんは片手で抱え込むようにしながら部屋まで連れてきてくれた。いやー、申し訳ない。でも、せっかくスパナさんに頼まれた仕事、ちゃんとやりたかったなあ。

「仕事は明日からで良いから 久しぶりに実家帰って疲れたんじゃない?今日は休んでなよ」
「…佐藤さん、本当にヤンキーですか?」
「意味わかんないこと言ってないで寝ろ 沢田さんには言ってお」
ガンッ
「…大丈夫?」
「いえ…」

うわああ、動揺しちゃったよ!不意打ちに沢田さんなんて名前出すから!ベッドの枠に打ち付けた手をさすりながら佐藤さんを見上げると、無表情ながらも心配してくれているようでとても申し訳なくなった。違うんだ、私は具合が悪いわけじゃなくて、少し頭の中がこんがらがっているだけなんだ。

「すいません…寝ます…」
「ああ、うん 今日はおやつ食べるの?」
「食べます」
「じゃあ起こしにくるから、おやすみ」
「すみません…おやすみなさい」

食いしん坊だと思われてるのだろうか…。