微暖湯 | ナノ

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「そういえば兄ちゃんのことはもう良いのか?」
「あら、山本さんが情報通」
「さっきツナに聞いたからな スパナも心配してたぜ」
「スパナさん…!」
「んで、大丈夫?」

山本さんだけでなくスパナさんにも心配をかけてしまうなんて…!今すぐにでも工房のスパナさんのところまで走り出したいのを抑えて山本さんと話すことにした。山本さんは雨の守護者だしこの性格だし、話相手にはぴったりだろう。

「兄にはボンゴレに入ってもらいたくありません」
「なんでだ?兄ちゃんいた方が楽しいんじゃねーか?」
「私が言えたことではないですが、父が一人になってしまうくらいなら兄には家にいてほしいです」

大切な人達には、危ないところにきてほしくありません。そう言うと山本さんにも思い当たる節があるのか、「あー、うん だな」と悲しそうな笑みで言われた。良かった、分かってもらえた。これを言って伝わらないようなら、兄にも私の思いは伝わらないと思うから。いい子いい子と頭を撫でられ、少し涙が出そうになった。大丈夫、ちゃんと言える。

「歩、あいつに連絡してあげて」
「沢田さん…?」
「待ってると思うよ あいつだって覚悟して来たんだから」
「…電話、してきます!」
「うん がんばって」

いつの間に入ってきていたのか扉の近くに沢田さんが立っていた。すれ違うときに「大丈夫、伝わるよ」と言われバッと振り向くと、優しい笑顔で頷かれた。…うん、大丈夫。

「うお、佐藤さん どうしたんですか?」
「ごめん…しばらく俺には話しかけないで」
「え?…えーと、お大事に?」

扉の向こうでしゃがみこんでいた佐藤さんは緩く手を振って私を見送ってくれた。大丈夫だろうか、顔色がとてつもなく悪かった。

「歩!」
「っ!スパナさん!」
「これ」
「…飴?」
「元気が出る飴 出来立てだ」
「え、…ありがとうございます」
「歩には笑っていてほしい ウチがそう思うんだから、みんなそうだよ」
「…スパナさん、ぎゅってして良いですか?」
「おいで」

スパナさんに飛びつき、胸に顔をうずめる。さっきまで飴を作っていたからか甘い砂糖の香りがする。私の体に回された腕が優しく背中を叩く。スパナさんは相変わらず優しいよ、大好きだ。スパナさんの腕の中を堪能してから顔を上げればすぐ近くにスパナさんの顔があった。うわ、恥ずかしいぞ。抱き着いておいて今さら何を言うか。

「歩はみんなが護るから」
「…スパナさんは?」
「もちろんウチも だから、行ってこい」
「はいっ!」

パンッと飛び出し携帯片手に庭に走った。発信を押せば今すぐ繋がる、いざ勝負!