微暖湯 | ナノ

一週間は一瞬か。



家への帰省期間は一週間だ。一日目は兄と映画を見て、二日目は休みを取った父とすごく久しぶりに話をした。もうお父さんと呼ぶのに抵抗はないけれど、担任だった名残から二者面談をされてる感がどうしてもある。進路はもう決まってるから話す必要ないけどね。学校のことは適当に話し、父が最も気にかけているボンゴレでの生活の話をたくさんした。沢田さんは兄経由で既に知っていたため信用しているよう。幹部の名前は知っているらしいけれど、性格や人柄を知らないから不安みたいで。…なんの心配もいらないくらい、みんな良い人なんだけどなぁ。適当に最近の出来事を話していたら、父がなぜか優しい目をして見てくることに気がついた。

「…なに?」
「いや…良い人達に出会えたんだなって思ったんだ」
「え、今私佐藤さんの悪口言ってた気がするんだけど」
「だって歩笑ってるぞ 話しながら笑うなんて、楽しい思い出がいっぱいだからだろう?」
「…不覚」
「いや、歩が幸せそうで良かった 中学の時からそうだが、お前は無理して笑う癖があった だけど無意識で笑うなんて、本当に幸せじゃなかったらできない」
「うっわ、お父さん気づいてたの?」
「担任はちゃんと生徒一人一人を見てるんだよ」

穏やかに笑った父は私の頭を撫でると部屋に戻って行った。いろいろ話していて気がつかなかったけれどもう夕方だった。父が部屋に行ったからか、兄がリビングのドアから顔を覗かせていた。やっぱりこの日も私と兄でご飯を作った。

三日目と四日目は父も兄も仕事で、私は一人都心に出て買い物を楽しんだ。帰りにケーキを買って帰ると、父に頭を撫でられ兄に抱き着かれた。私もう高校生なんだけどなー、なんて、言わないけどね。

五日目はアルバムを見たり本を読んだりとのんびり過ごした。養子だからもちろん私の小さい頃の写真はこのアルバムにはないけれど、私のアルバムはきちんと産まれた時からの写真が収められている。でも兄の小さい時の写真を見るのが好きなんだ。女の子みたいで本当に可愛い。絶対男に告白されたことあるって。

六日目、七日目は土日。仕事が休みだから遠出したいという二人の案に乗り日光に観光しに行った。懐かしいな、なんで日光チョイスしたんだろう。有名な場所を回るでもなくお土産屋を冷やかすでもなく、綺麗な景色を見ながらひたすら話し続けた。家族ってこんなに会話続くもんなんだ、なんて今さらながら分かって。気づいたら笑っている自分にすごく驚いた。