微暖湯 | ナノ

チャラい奴と笑顔なボス。



「クレープ…!沢田さんクレープありますよ!」
「はいはい、苺で良い?」
「うーん…チョコもちょっと食べたいです」
「じゃあ半分こしようか」
「はい!」

なんだか普通にデートしちゃってる。いや、良いんだけどね、楽しい分には幸せです。クレープを買ってきてくれるという沢田さんを待つため道の端の日陰に入った。涼しい風が吹いていて気持ちが良い。

「お姉さん一人ー?」
「彼氏待ってるから近寄らないでください」
「あ、そっかぁ ごめんねー?」
「いえ、こちらこそ」

…う、うわ、ナンパされた…!!初めてナンパされた!上手く追い払えたけど、ていうか今の人良い人だ、ナンパって怖くないのか。クレープを持ってきた沢田さんに今起きたことを説明すると呆れたような目で見られた。いや、今のは表情違いますよね、ここは上手く追い払えた私を褒めるところでしょ。ぷくーっと頬を膨らますと頭を撫でられた。子供だと思ってるのか、沢田さんに比べたら子供かもしれないけど!

「危ない男もいるから無茶しないで」
「…無茶してないです」
「じゃあ俺がいないとこで知らない男と話さないで」
「……沢田さんのばーか」

照れ隠しだよなんか文句あるか。プイッとそっぽを向きもう一度"ばーか"と呟くと目の前にクレープを出された。このタイミングで渡すとか空気を読めないのですか。けれどクレープは欲しいので手を伸ばすとあと少しのところで遠ざかるクレープ。…は。上を向くと沢田さんが泣きそうに眉を下げてクレープを持ち上げていた。な、なんで泣きそう…!?

「ごめん、俺がヤキモチ妬いただけ」
「…沢田さん」
「ナンパから助けるのが彼氏の役目でしょ?」
「彼氏じゃないですけど」
「今は彼氏役だから」
「…はい」
「だから、今度は俺が助けるね」

一人で満足げに笑った沢田さんは苺のクレープを私に手渡した。少し頬が暑いのは太陽が日差しを強くしたからだろう。


「あ、可愛い女の子発見〜」
「…お前」
「…あれ、君ってもしかして、ボンゴレ?」

チャラそうな奴は私の肩に手を置いたが故に沢田さんに瞬殺された。声をかけるだけなら良かったものの…って、アレ?あの人今"ボンゴレ"って言わなかった?

「…邪魔者も消えたし、今日は二人で楽しく遊ぼうか」

なるほど、今のが今日のターゲットだったのですね。爽やかな笑顔で倒れるそいつをふんずけて行った沢田さん。す、素敵…!