微暖湯 | ナノ

ドキドキ、初めての。



クロームさんに協力いただき見苦しくないようにメイクアップした。"可愛いよ"と言われ俄然自信がつきました。玄関までついてきてくれると言う優しいクロームさんをやんわりと断り、一人廊下を歩く。だって骸さんの気配がしたんだよ、クロームは僕のものですってオーラびしばし飛ばされたら私だって気遣いますよ。ただ怖かったからっていうのもあるけど。

「歩、…」
「沢田さん…って、またリボーンさんいるし」
「…お前が良いのか腕が良いのかどっちだろうな」
「え?」
「超可愛いよ歩!ていうか可愛くし過ぎ!」
「…え、あ、ありがとうございます…?」
「それはクロームにやってもらったの?」
「あ、はい クロームさんは女の子の中の女の子です」

ない胸を張って言うと孫を見るような目をしながら沢田さんが頭を撫でてきた。沢田さんはラフで動きやすそうなパンツにシンプルなTシャツと可愛いカーディガン。やっぱりセンスが良い。私はクロームさんに貸してもらった薄いピンクのワンピースに編み上げブーツだ。いつもは適当に結んでいる髪もふわふわに巻いていただいて、軽くメイクしたらそれはもう別人だった。自分で驚くくらいには別人だった。
メイクとか、したほうが良いのかな。でも機械ばっかりいじってたら油だらけになるのがオチだし、お金はなるべく使いたくない。お父さんに何かプレゼントしたいから、目標も決めずひたすら貯金してるんだよね。いくらお父さんになってくれたからって、おじいちゃんの家をずっと見ていてもらうのも悪いと思ってるから。自分でどうにかできる歳になるまでは甘えるけどね。
話が逸れた。ところでリボーンさんは何故ここに?

「ツナの試験だ」
「…沢田さん大人なのに勉強しなくちゃいけないんですか?」
「うん、違うから」

そういえばそろそろ定期考査だっけ。数学だけ頑張れば良いかな。他の教科つまんないし。リボーンさんのせいで嫌なこと思い出したじゃないか、赦すまじ。睨もうと思ったけれど帽子の隙間から鋭い目が見えたからやめておいた。なんだってここには怖い人ばかりいるのでしょうか。

「じゃあ行こうか 歩はただのデートだと思ってくれれば良いから」
「は、はい…」
「リボーンは離れててね」
「しっかりやれよ」
「言われなくても」

初デートなのにワクワク感が足りない。