微暖湯 | ナノ

雨降って泥だらけ。



小さな雑貨屋に入り可愛い袋とリボンを手に入れた。意外と安くて助かりました、ありがとう店長さん。帰りは歩いて帰ります、と車を断ったため二人並んでとことこ歩く。

「涼しいですねー」
「うん 歩、飴食べる?」
「いただきます」

スパナ型の飴をいただいた。持ってきていたのか、ていうかこっちで作っていそうだ。ぺろぺろとなめながらスパナさんを横目で見ると眠そうに目を擦っていた。そういえばスパナさんはイタリアにきたのに何もしていない気が…。まあ仕事は私がやってしまったからしょうがないとして、観光とかしてなくないか?…あ、でもイタリア出身?だよね?観光するまでもないか。

「…あ」
「え?」
「ヴァリアー…?」

スパナさんの言葉に前を向くと確かにそこにはベルさんがいた。私服ってことは今日はオフなのかな。携帯の電話帳からベルさんを探して"後ろ"とだけ打ってメールを送った。直後にベルさんは振り向いて驚いたように口を開けた。かっこいい人はどんな表情でもかっこいい。素早い動きで近づいてきたベルさんは急に私の頭に手を乗せた。

「お久しぶりです」
「…なんでここにいんの?」
「ディーノさんのところへお仕事しに」
「ああ、スクアーロが言ってたな」
「はい 元気そうですね」
「当たり前じゃん …そっちは、スパナだよな」
「どうも」
「…ども」

スパナさんが苦手なのか引き攣ったように笑ってた。何故だ。頭をそのまま撫でられくすぐったくて目を閉じると後ろから抱きすくめられた。だ、誰だ!

「うっ、え、スパナ…さん?」
「…帰るよ 跳ね馬起きる」
「あ、そうですね じゃあまたメールしますねベルさん!」
「…おう じゃあな」

今度は呆れたように笑って手を振ったベルさん。だから、何故だ。スパナさんを背中に感じたまま歩き出すと、人通りが少ないにしても人目が気になる。そして歩きにくい。

「スパナさん」
「…んー」
「どうしたんですか?」
「なんでもない」
「…少し、歩きにくいです」

そう言うと静かに腕を離し隣に並んでくれた。なんだったんだろう。スパナさんの顔を見てもいつも通りの無表情。…ちょっと、不機嫌そう?視線を感じたのかチラッと私を見て困ったように眉を下げた。私何かしてしまいましたか?

「ベルと仲良しなのか?」
「…うーん、気は合います」
「付き合ってるの?」
「なっ、な、なぜに!?ただの友達ですよ?ていうか、付き合うとか、その…彼氏、とか…いないです、よ?」
「…そう」

ちょっと笑ったスパナさんはいつものように頭を撫でた。