微暖湯 | ナノ

外は星空、中は青空。



バンッ
と音をたててスパナさんの部屋に入った。ノックし忘れたと思った時にはもう部屋の中だったから気にしない。

「…歩 どうした?」
「こんにちはスパナさん!お菓子何がおいしいですか?」
「……話が読めない 落ち着いて説明して」

足踏みをしながら今にも走り出しそうな私をスパナさんはいつも通りの調子で止めた。うん、一旦落ち着こう。ディーノさんにブレスレットをもらったこと、お礼にお菓子を作ろうと思っていること、なんのお菓子が良いか分からないから参考にスパナさんに聞きに来たこと。順を追って話すと理解してもらえたみたいで考える人のポーズで黙ってしまった。

「やっぱりケーキがいいですかね?」
「…何をもらっても歩が作ったものだったら嬉しいよ」
「ああもうっ 嬉しいけどそれじゃダメなんですよ!」
「ていうかブレスレットあげてお菓子貰うとかあいつに良いことしかない… 後でボンゴレに報告だな」
「え?沢田さんがどうかしましたか?」
「ううん、ボンゴレも歩のお菓子もらったら喜ぶかなって思っただけ」
「ああ、帰ったらスパナさん達にも作りますね!」

結局何を作るか決まらずに、とりあえず談話室に行ってみることに。キッチン借りる許可貰うのと、あわよくば部下の方達にディーノさんの好きなものを聞こうかと。今度はゆっくりと歩いて向かう。ほら、急がば回れだよ。そして走ると必ず事故が起きるからその予防策でもある。頭良いなー私。悲しくなってきました。

「おお歩ちゃん まだ寝なくて良いのか?」
「忘れてた!」
「…寝るのをかい?ははっ、面白い子だな」

部下の方達に大爆笑された。あー、そういえば夜でした。外見てないから気がつかなかった…。キッチンを借りるのは明日帰る前で間に合うかな。とりあえず調査だけでも。"ディーノさんの好きなものはなんですか"と聞くと笑顔で答えていただいた。

「歩ちゃんが作ったもんならなんでも喜ぶと思うぜ」
「いや!それじゃ意味が…!」
「いっそのこと歩ちゃんをプレゼント、みたいな」
「えっ」
「おい誰だ今くだらねえこと言ったやつ!」
「おじさんばっかですまねえな」
「え、いや、…はは」

このテンションが苦手ってことは言わずに愛想笑いをした。いや、嫌いじゃないんです、苦手なんです。おじ様に混ざって若いお兄さんもいたけど、男の人が集まったら年齢関係ないのかな…。盛り上がってる輪から外れている真面目そうな人達にもう一度聞いてみると、少し考えてから"食べやすいやつにしてやりな、こぼさないようなもん"と笑顔で答えてもらった。あ、部下の方達見てないところでもちゃんと食べられるようにっていう心遣い?さすがずっと一緒に動いてるだけありますね。

「参考にします!ありがとうございます!」
「おう、応援してるぜ」
「はいっ」

部屋に戻ってレシピを考えて寝よう。