微暖湯 | ナノ

七転八倒はつらい。



屋敷に戻りベッドに飛び込んだ。つーかーれーたー!最近動いてなかったから足が棒のようだよ。たまには運動しないとなあ。そのまま眠りにつこうと思ったけれど、そういえば今日スパナさんと話していないと気づいた。スパナさんの部屋に行こう!部屋を飛び出ると廊下を歩いていた人にぶつかった。前方不注意です。

「ごめんなさいすみません!」
「った… ああ、歩 大丈夫か?怪我してない?」
「ディーノさん!私は大丈夫ですけどディーノさん大丈夫ですか?すみません急いで出たら気づかなくて…」
「ん、俺は大丈夫 歩が怪我しなくて良かったよ」

相変わらずのイケてるメンズ。略してイケメン。手を差し出すと一瞬驚いた顔をした後に掴んで立ち上がった。あ、女子がやったら男子としての顔が立たないですよね。心の中で謝って「どうしてここに?」と疑問をぶつけた。スパナさんには後で会いに行けば良い。

「これ、イタリア土産」
「えっわざわざありがとうございます… 開けて良いですか?」
「どうぞ」

包装紙を破らないように取り小さな箱を開けてみると、中には私が欲しかったブレスレットが入っていた。驚きで声を出せない私をディーノさんは笑いながら撫でた。

「ネックレスも買おうか迷ったんだけどな、ツナに怒られそうだからやめといた」
「う、えっと、あの」
「…いらなかったか?」
「違います!すごく嬉しいです!」

ブンブン首を振って精一杯言葉を紡ぐ。だってこれ高かったじゃないですか。私ディーノさんに何もしてあげられてないのにもらったらダメな気がするんですが…。ていうかいつの間にこれを、って、あの時?知り合い見つけたから待ってろって、あの時に買ってきてくれたのかな?私がジッと見たりするから気を遣わせてしまった。自分のバカっ。

「歩が喜んでくれるもんならなんでも良かったんだ なかなか会えないから少しでも近くに感じるようにアクセサリーが良かっただけで、これは俺の我が儘 もらってくれないか、歩」
「…ありがとう、ございます」

グッと頭を下げてお礼を言った。"ありがとうございます"だけじゃ足りない。なんかできることないかな。…お菓子!キッチンは多分貸してもらえるだろうし、料理は唯一の私の特技だから。思い立ったらすぐ行動。さっきはそれでディーノさんにぶつかってしまったからキョロキョロと回りを見てから走りはじめた。

「転ぶなよ歩!いてっ」
「ディーノさんが気をつけてくださいね!おやすみなさい、また明日!」
「おー」

転んだ体勢のまま手を上げたディーノさんに手を振ってスピードを上げた。スパナさんのところに寄って相談しよう。