微暖湯 | ナノ

宝石箱をぶちまけた。



キラキラの大人びた人達の行き交う中をディーノさんの後に続いてひょこひょこと歩いて行った。イタリアの中でも有名なこの街はテレビで見るようなオシャレさんしかいなくて私はホームシックです。こんなことならもっと洋服持ってくれば良かった。ペラッとしたワンピースだとディーノさんの隣に立つことさえ許されない気が…。ていうかそこら中のお姉様方が必ずと言って良い程、ディーノさんを見て赤くなった後に私を睨んで通り過ぎて行くのですが私はどうしたら良いのでしょうか。

「到着!…って、なんでそんな離れてんだよ」
「私も一応女の子なんです…」
「は?何の話だ?」

流石に視線の嵐の中ディーノさんの近くに居続けるのは無理でした。女の子特有のそういうものが嫌いだけれど、回避する方法を知らないからしょうがなく普通の女の子のように行動をする。負けた気がするからあんまりこういうのしたくないんだけど、イタリアでは私本当にクズじゃないか…。なんでみんなこんな輝いてるんだろう。みんなモデルなんだろ知ってるよ。俯いて歩いていると止まっていたディーノさんの背中にゴツン。い、いたい…。

「顔上げろ 堂々としてりゃ誰も文句なんか言わねぇよ」
「…はい」
「あと笑ってろ 可愛い歩を見せびらかしたいからな」
「え、や…」
「ほら行くぞ」

自然な流れで手を取られたから抵抗する隙もなくて、ディーノさんの背中を見上げて歩き出した。大人って素敵です。
外装を裏切らず商品も可愛らしいお店。思わずブレスレットを手に取って光にかざすとキラキラと控えめに輝いた。うわっ、ストライク。しばらくそれに見惚れて、同じデザインのネックレスも見てみた。欲しい…けど、高い。

「ん、これ買うのか?」
「えっと…いや、良いです」
「…そうか じゃあ次の店行こう」
「……はい」

後ろ髪引かれる思いってこれか…。出口でチラッと盗み見て、もうスッパリ諦めた。ダメだよ、お金ないんだから。店を出るとディーノさんが"知り合い見つけたから挨拶してくる"と言って私は一人で噴水のヘリに座った。改めて広場を見回すと外国ということを実感した。金髪の美女や鼻の高いイケメン、読めない字と見慣れない色が並ぶお店。ぼうっとしていて気づかなかったけれどいつの間にか隣にディーノさんが座っていた。気配を消さなくても今の私には近づけるだろう。

「お疲れ様です」
「おう 疲れたか?」
「元気です!」
「ふはっ んじゃ行くか」

普段はかっこよくて笑うと可愛いとか卑怯だよなあ。