微暖湯 | ナノ

手探りで前に向かって歩け。



小さい頃から歩はおじいちゃんの家で暮らしていました。産まれてすぐに両親をなくしていたからです。両親はいなくても優しく厳しいおじいちゃんのおかげで歩は素直で良い子に育ちました。友達に困ることもなく平和に過ごしました、…12歳までは。中学校に入ると同時に、おじいちゃんが眠りにつきました。もう起きることはありません。歩には知り合いの親戚がいませんでした。おじいちゃんが最後の家族だったのです。

「…家は?」
「土地ごと買ってあったので住む場所は大丈夫だったんですけど、中学生じゃ光熱費払えなくて」

一時は電気とガスと電話を止められて、ご飯は食品を扱っている友達の家からもらっていました。歩は誰にでも分け隔てなく接していたので皆からの信頼が厚く、協力してくれる友達はたくさんいました。色々な手続きは先生に頼み、中学校をやめることはありませんでしたが厳しい生活を送っていました。そんなある日。新しく中学校に赴任した先生に"養子にならないか"と誘われました。その先生は学校に来てすぐに生徒と馴染み、人気のある先生でした。担任の先生に相談してみると"信用できる先生だ"とはっきりと言われました。歩はその先生が好きでしたし、会わせていただいた家族も良い人ばかりだったので、養子になることを決意しました。

「それが水島先生 今は奥さんを病気で亡くして息子さんと二人で暮らしています 私がボンゴレに入ると言った時はすごく反対されました」
「心配してくれたんだな」
「…みたいです すごく優しい人なんです」

歩は幸せでした。優しいお父さんとお母さん。憧れだった兄。おじいちゃんの家を出るのはとても悲しかったのですが、水島先生はおじいちゃんの家を売らないでそのままにしておくと約束してくれました。水島歩に名前が変わって数年。中学を卒業して高校にも無事入ることができました。そして会ったのが、沢田綱吉さん。ボンゴレファミリーのボスでした。

「…どうしてボンゴレと会ったんだ?」
「お兄ちゃんが沢田さんとクラスメイトだったらしくて、同窓会が終わった後に家に連れてきたんです」

沢田さんは妹がいたことに驚き、義理の妹ということに更に驚きました。多分そこで頭を撫でられたからでしょう。歩がどういう展開でここにたどり着いたのかを知った沢田さんは歩をファミリーに誘いました。初めは意味が分からなかった歩も沢田さん達のやろうとしていることを聞いた途端やる気を出しました。歩は並盛が大好きだったのでボンゴレファミリーの考えに同調したのでした。そこからはとんとん拍子に話が進み、歩はボンゴレファミリーに入ることが決まりました。

「おしまい こんな感じです」
「歩って波瀾万丈な人生送ってるんだな」
「ですよね!でも、それがとても楽しいんです」
「…いい子」
「えへへ」

優しく頭を撫でられてすごく嬉しくなった歩でした。


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歩の位置をはっきりさせたかったんです。暗いのはここだけ、の予定。