微暖湯 | ナノ

ギンギラギンにさりげなく。



配電盤はすぐに直り、後は屋敷を回って異変がないか確認するだけだ。歩き始めてだいぶ経つけどまだスパナさんには会えていない。ロマーリオさんに案内された談話室には部下の人達と笑いながら話すディーノさん。誰もスパナさんの行方は知らないらしい。追いかけて行った部下の人も戻ってきていて、スパナさんが角を曲がったら消えたと証言。なにこれ、急にミステリーになるの?

「私スパナさん探してきます」
「俺達も探すか お客様だしな」
「すみません よろしくお願いします」

ていうかスパナさん仕事してないじゃん。イタリア来ただけだよ。まあ私が頼んだんだけど…。入江さんだったらもう日本に帰ってるんだろうな。でもやっぱりスパナさんが良かったんだ。

「すーぱーなーさん」

響くだけで返事が帰ってこないっていうのはなかなか悲しいものよ。スパナさんお返事ください、どこからでも良いので私へあなたの声を聞かせてください。なんだかとても嫌な予感がする。

「…歩?」

…え?今のスパナさんの声だよね?なんで窓の外から聞こえるの?ここ、最上階なんですけど。

「スパナさぁぁあん!?」
「やっぱり歩だ なんで逆さま?」
「スパナさんが逆さまです!吊られてます!え!?何があったのですか!」
「んん、確か銀髪の…スクアーロ、だったっけ?」
「…スクアーロ?」

スパナさんの話によると、なぜかスクアーロさんが屋敷の中にいて、偶然見つかったスパナさんは訳も分からないままいつの間にかこの状態だったらしい。なんで慌てないでいられるのか不思議でしょうがないのですが。ていうかスクアーロさんはスパナさんをどうしたかったんだろう。

「とりあえずそこから下ろさないと… ディーノさん呼んできますね!」
「うん、お願い」

ディーノさんでも部下でも誰でも良いから早くスパナさんを助けないと。頭に血上っちゃう。屋敷の中を走り回っている途中で思ったけど、ディーノさんとスクアーロさんは級友だった気がする。もしかしてディーノさんがスクアーロさんを招いていたのかな。ああもう、どうでもいい。後でスクアーロさんに問いただせばいいだけだ。

「いたー!スクアーロさん!!」
「…は?なんで水島がいるんだぁ?」
「お前スパナさんに何してんだよ!とりあえず早く下ろして!」
「スパナ…って あ、あいつか」
「あいつか、じゃないです!はーやーくー!」
「お、おぉ…」

腕を掴んで走り出すと急発進だったにも関わらずこけることなくついて来た。少しイラッとしたのはこの際放っておこう。無事スパナさんのところまで連れて来て、睨みつけると眉間にシワを寄せながらスパナさんを下ろしてくれた。よし、事情聞かせてもらおうじゃないか。