微暖湯 | ナノ

アテンションプリーズ。



飛行機は用意できなかったから普通の国際便なんだ、本当にごめん。私はスパナさんと一緒ならどんな場所でも良いのに、沢田さんはとても残念そうに言った。ていうか自家用ジェットなんて急に準備できなくて良いんですよ。それが普通なんですよ。

「歩は優しいね」
「…沢田さんもとっても優しいですよ」
「ありがとう …じゃあ、ディーノさんによろしく」
「はい!頑張ります」
「お腹空いた…」
「…スパナのこともよろしく」
「はい、もちろん」

玄関で沢田さんが見送ってくれて、空港まではリムジンが送ってくれる。なんだかセレブみたい、なんて感覚ボンゴレに入って半年でなくなってしまった。

「歩、窓側が良い?」
「どっちでも良いです スパナさんが好きな方へどうぞ」
「んー じゃあ歩が窓側」
「了解です」

飛行機は何回乗っても馴れることがなく少し怖い。雲の上を飛んでいるのは綺麗だから好きなんだけどな。目をつむって浮遊感を待ち構えていると、膝の上の手を誰かに取られた。…って、隣スパナさんしかいないんだけど。

「歩、本当に飛行機ダメなんだな」
「えっ…と、なんでですか?」
「ボンゴレに言われた 歩は飛行機苦手だから早く終わるジェット機の方が良かったのにって」
「ああ 心配かけてすみません」
「ううん こうしてれば怖くない?」

ぎゅっと力を入れて手を握られこくこく頷くと、嬉しそうに微笑まれた。もう!これだからスパナさんは好きなんだよ!きっと沢田さんも手を握っててくれるんだろうな。でもこんなに嬉しいのはスパナさんだからなんだろうな。スパナさんと話していたらいつの間にか離陸していて、空を見てスパナさんを振り返るとやっぱり微笑んでいた。うっ、子供っぽかったかな。なんだかスパナさんが大人に見えます。

「やっぱり歩は笑ってる方が良いよ」
「スパナさんも笑ってるの素敵です」
「うん 楽しいこと好き」
「私も大好きです」

イタリアまでは遠いから途中で寝つつ、お菓子を食べまくりながら飛行機の中を過ごした。私は何度も振動にびくつき、スパナさんはその度に優しく頭を撫でてくれた。本当にスパナさんが一緒で良かった。任務じゃなくて旅行みたいに楽しめたのはジェット機じゃなくて飛行機だったからかも。