「…卒業式、泣くやろ?」
時の流れは早いね。のんびり過ごしているつもりでも、青春真っ盛りの高校時代はあっという間に過ぎていった。卒業が目の前に近づいている。

「なまえ先輩」
「光くん なんでこんなところにいるの?」
「サボり 先輩こそ、今日も練習ちゃうの?」
「仲間仲間ー」

ずっと図書委員を続けていた光くんとは図書室で本の貸し借りする度に話をしていて、いつだか「名前、なまえやったっけ」と話の流れで聞かれて、それ以来名前で呼ばれるようになっていた。私も同じように名前で呼ぶと光くんは目をそらしてしまったけれど、その時の私はもうそれが照れているだけだと分かっていた。

「卒業、するんよな」
「するねぇ」
「…卒業式、泣くやろ?」
「…泣く、かなぁ」
「絶対泣くわ なまえ先輩涙もろそう」
「なにそれ 私光くんの前で泣いたことある?」
「…この前映画行ったときこっそり泣いてたやん」
「うええ、気づいてたの?わざわざお手洗い行ったのに…」
「俺を騙そうなんて百年早いわ」

光くんを騙そうなんて思ってないけど…、そっか気づかれてたんだ。まあでも、その場でからかわずにいてくれるところが彼の優しさなんだろうけど。
卒業かー。今まさに卒業式の練習をしているだろう体育館を見ていると、光くんがクイクイとスカートの裾を引っ張った。座っている光くんに合わせるようしゃがみ込むと涼しい風が通り抜けた。
光くんは猫みたいに、涼しいところを探すのが得意だ。冬は洋服を着込むか布団に包まるかして丸くなっている。
壁に寄りかかりぼーっとしていると光くんがコテンと頭を傾けて私の肩に乗せた。動かさないように顔を覗き込むと目をつむって穏やかな呼吸をしている。勉強頑張ってるみたいだし、疲れてるのかな。私も光くんに寄りかかるように頭を傾けて、目をつむった。光くんの隣は、暖かいなあ。

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