「気づくん遅いわ…」
送辞と答辞、校長先生の話にPTA会長達の話、合唱もやって校歌も歌って。隣の女の子がポロポロと泣き始めたのをきっかけにクラスの子たちもぐずぐずと泣いて、それでも私は泣かなかった。三年間楽しかった。友達もたくさんできたし、部活の先輩後輩とも仲良くできた。光くんという特別な後輩もできて、きっと私はとても幸せだった。

「…クラスの集まりとか、あるんちゃうの?」
「あるある でも、まだ時間あるから大丈夫」
「ふーん …なまえ先輩」
「ん?」
「卒業おめでとうございます」
「…うん、ありがとう 光くんと離れるのはちょっと寂しいなあ」
「離れなくても良いやん」
「え、でも私卒業するし」
「だから、卒業したからって離れる必要ないやろ …それとも、もう俺と会いたくない?」
「会いたいに決まってんじゃん!!」
「…ん、俺も」

今まで見た中で一番優しい顔で微笑んで、私の頭をぽんぽん撫でた光くん。恥ずかしくなったので目を逸らそうとしたら、光くんがぎゅっと抱きしめてきた。手を繋いだことはあったけれど、抱きしめられるのは初めてでどうすれば良いかわからなくなってしまった。キツくなくて抵抗すればすぐにでも外れそうなそれを、しかし私は外すことができなかった。優しい力が嬉しくて応えるように抱きしめ返すと、驚いたように身体が揺れたあと、ぎゅうーっと、抱きしめられた。

「光くん、私、光くんが好きみたい」
「気づくん遅いわ… もう卒業式も終わったで」
「うん、でも今気づいたの …光くん、は?」
「…好きに決まってるやん 大好きです、なまえさん」
「うん、私も大好き」

ぎゅうっと力強く抱きしめあってから離れた。いつもと変わらず無表情かと思ったけれど、光くんはほんの少し口角を上げていた。幸せを噛みしめるようなその表情に私も思わずにやけてしまう。うん、好き。クラスに戻らなきゃ、と笑って言って光くんに手を振るとその手を取られすぐ近くに寄せられる。ちゅっと音がして顔が離れてから、頬にキスをされたと気づき一瞬で顔が赤く染まる。

「手が早い!」
「ほっぺやん」
「そういうことじゃなくて〜っ!もう!光くんのばか!好き!」
「ふっ なまえさん可愛すぎ」

はよ行かんと次は口にするで?とニヤリと笑った光くんから逃げるように走り出した。打ち上げ終わったら、電話をしてみようかな。きっと今日の夜にはこれが現実か不安になってしまうから。


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