「ああ、これ、クラTッスよ」
学校全体が明るく元気になる日。今日は文化祭だ。私もクラスの手伝いと部活展示の受付をやりつつ雰囲気を楽しんでいた。いつもより人が多いしみんなテンションが高いし、違う場所みたいだ。それはそれで楽しいんだけれど、私は元々騒がしいのがあまり好きじゃないから無意識に静かな場所を探してしまう。文化祭という特別な日に静かな場所はそれだけで神聖な雰囲気が漂っている。ぐるぐるとクラスごとの展示や企画を見つつ校内を探索すると、やっぱり一つだけ見つかった。去年も見つけた静かな場所。

「失礼します」

closeと書いてある札を無視してドアを押すと簡単に開いた。司書さんが面倒臭がり屋だから、鍵が閉まっていることはほとんどない。誰もいないだろう空間に一言声をかけ踏み込むと、ひんやりとした空気が待っていた。さすが図書室。

「…夢?」
「え、財前くん?」
「…なんで、ここにおるん」
「いや、それはこっちのセリフ …寝てた?」
「おはようございます」
「うん、おはよう お邪魔しても良いかな?」
「どうぞ」

利用者用のソファに寝転がっていたのは財前くん。いつも通りダルそうな顔で、のそのそと起き上がってきた。…んーと。

「…先輩?どうかした?」
「や、それ、派手だなぁって」
「ああ、これ、クラTッスよ」
「クラTって…ああ…」
「俺がこんなどピンクのキモいTシャツ着るわけないやん」
「着てるじゃん…」
「強制なんやもん クラスメートにシャツ取られて着替えられんし」
「それはお気の毒に…」
「先輩も、それクラT?」
「うん 可愛いでしょ?」
「めっちゃ可愛い」

起き上がった財前くんが着ていたのはショッキングピンクで、1年2組という文字となにかのキャラクターが書かれたTシャツ。財前くんにそのTシャツは似合わないなあと考えていたのが顔に出てしまったみたいだ。シャツを取られて仕方なくと拗ねたように言う財前くん。私の着ているTシャツを見て先輩も?と聞いてきた。裾をつまんで柄を見せると目を細めて"可愛い"なんて言うから、Tシャツのことだと分かっていても少し照れてしまう。財前くんが座っているソファの向かいのソファに座って背もたれに寄りかかった。一人になりたくて来たけど、財前くんなら静かだしいっか。

「…文化祭、まわんなくて良いんスか?」
「んー、一応ぐるって回ってきた 財前くんは?」
「興味ない」
「おおクール…」

ポツポツと話しかけてくれるのでのんびりお話タイム。遠くに聞こえる喧騒が心地よかった。

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テーマ「人外ファンタジー」
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