「…あんた、どこ中ッスか」
「お願いします」

カウンターに本を置き声をかけると、雑誌を読んでいた図書委員の子が気がついてパソコンを操作し始めた。かっこいい子だなぁとじっと見ていたら、顔を上げたその子とバッチリ目が合った。なぜか目を逸らさないのでそのまま瞬きを何度かしたら、その子が「あ」と口を開けた。

「…あんた、どこ中ッスか?」
「えっ、…四天宝寺ですけど」
「やっぱり 図書委員やっとった?」
「あ、はい」
「なんや見覚えある気ぃして」
「…ごめん 私全然覚えてない…」
「別に良いわ 俺やって名前までは覚えとらんし」
「えっと、名字なまえです」
「財前光 よろしゅう」

本の貸し出し操作を終えた財前くんは私に本を渡しつつ自分の名前を言った。あれ、同じ学年の人はだいたい名前覚えてるんだけど、聞き覚えもないし顔も全然覚えてない。転校生とか…?だったらもっと印象に残ってるか。

「何組?」
「え、あ、二組」
「……え」
「え?」
「…もしかして、二年?」
「…え?」
「すみません 俺同い年かと思っとった もともと同じクラスのやつの顔も覚えとらんし」
「ん?どういうこと?」
「…一年二組、財前光ッスわ」
「…年下?」
「そういうこと」

あ、ああ、なるほどね。それじゃあ記憶にないのも無理ない。図書当番は同じ学年の人とだったから後輩までは把握してないんだ。…いや待って、財前くん完璧に私を同い年と認識していたよね。そんなに一年生っぽく見える?小さいから!?身長が足りないの!?

「先輩やってんか そりゃ当番被らんよな」
「…あ、図書当番?学年別だったもんね」
「ちっこいから、同い年かと思っとった」
「…うん、だよね」
「悪口とちゃうから」
「大丈夫、言われ慣れてる」

牛乳嫌いだから伸びないのかなぁ…。そろそろ牛乳を克服しようか悩んでいると、財前くんが椅子から立ち上がった。…なんで笑いつつ見下ろしてくるのかな?一応先輩だよ?

「ちっさ」
「ひどくない…!?」
「ご利用ありがとうございまーす」
「…どうも」

ひらーっと手を振って言うのでむすっとした顔で返した。私が小さいの確認してから帰るよう促すなんて、財前くん意地悪だな。図書室から出て教室に向かっている間、楽しみな本の内容ではなく財前くんのことばかり考えていた。


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