暗密番外編 オリジナルキャラ注意 「名字先輩おった」 「お、あの子がお前が惚れてる子か」 「うっさい黙れ」 「ひでぇ!なあ、話しかけてもええ?」 「地獄に落ちてからなら」 「なあ、財前今日毒舌多いんやけど 俺泣くで?」 「きしょ」 「もういい先輩に話しかけてくる」 「ちょい待ち …俺も行く」 「最初からそうしろっちゅーの」 俺の友達、財前光は現在一人の先輩に恋煩いをしているらしい。ドSで冷徹なこいつが好きになる人ってどんな人なんやろ、って気になった俺は善哉を奢ることとテスト前ノート見せることとゲームカセット一つあげることを条件にその先輩を教えてもらえた。まあ俺財前より頭ええし?ゲームいらんやつやったし?ちゃんとした喫茶店で奢らされる美味しい善哉はただの高校生には多少痛かったけど、それでも財前の好きな人ってのは気になったんやからしゃあない。 確かテニス部の…忍足先輩?元気そうな先輩と名字先輩が笑って話しているすぐ横を通る瞬間、ポケットから携帯を取り出して一緒に出てきてしまったハンカチを落とした。もちろんわざとやで?ハンカチに気がついた名字先輩が、俺に声をかけた。…声かわええなぁ、この人。 「あっ えっと、そこの人、ハンカチ落としましたよ?」 「え?俺?…あ、ほんまや すいません、気ぃつかんくて」 「いいえー、これからは気をつけてね …あれ?二年生?三年生の階で何してるの?」 「ちょっと用事があって …名字先輩に」 「え?私?」 「先輩、彼氏とかおりま、っ!?なにすんねん財前!!」 「お前が何してんねん、ナンパか」 「これが一番話しかけやすいんやもん」 「もんとか言うな気持ち悪い」 「…財前くん?」 「…なんすか」 「財前くんのお友達?」 「ただのクラスメイトッスわ」 そっぽを向いて答えた財前。その財前を見て名字先輩は小さく笑った。忍足先輩がまごうことなき空気やった。自分で始めといてアレやけど、財前に叩かれたとこむちゃくちゃ痛いから叩き返したい。自分が悪いのは分かっとるからなんもせえへんけど。心の中だけにしとくわ。 「財前友達おったんか」 「謙也さんおらんでしょ」 「めちゃくちゃおるっちゅー話や!!」 「うっさ…」 若干バカにした顔で財前に話しかけた忍足先輩は、財前に静かに睨まれてすぐに大人しくなった。こわっ、年上相手にも容赦ないんかこいつ。あ、身長低めの子の上目遣いが良いとか思ってる人、財前のは下からでも見下されてる気分になる不思議な睨みやからやめといた方がええで!悪いこと言わんから俺にしとき! 「財前くん、お友達連れてどうしたの?…私に会いにきたって、本当?」 「…俺、嘘つかんッスわ」 それが嘘やーん。え、財前もしかしてこの人にはあんまり毒吐かん?ピュアっ子ぶっとるん?財前がピュアとか冗談でも言えんわー。頭の中で考えてただけなのに財前に睨まれたから、多分あいつ超能力者や。 「なまえ先輩、今日は当番入っとる?」 「うん 昨日司書さんに頼まれて急に入ったの」 「昨日発売だった雑誌届いとると思います?」 「あ、多分今日くるよ!もう一人は男の子だから重いものはその子に任せて良いわよ、って言われた」 「…今日、行きます」 「部活間に合う?」 「謙也さん、遅れるって部長に伝えといてくれます?」 「はいはい」 お、もしかして今のはヤキモチとか嫉妬とか呼ばれる類の?クールな財前もそういうことするんやな。この様子やと、忍足先輩は財前がなまえ先輩のこと好きって知っとるんやろか。んー、でもこの先輩の視線…。 「忍足先輩って、名字先輩の友達ですか?」 「…そやけど、なに?」 「あ、なら俺の勘違いかもなんで大丈夫ッス …ただ、報われない恋は辛いんちゃうかなあって、思っただけなんで」 「…君、今日暇か?」 「帰宅部なんで」 「テニス部終わってからで良かったら話したいんやけど」 「良いッスよ 俺、先輩みたいな人も大好きなんで」 財前みたいなツレないやつも好きやけど、先輩みたいに懐きやすい人もそれはそれで可愛いもんな。笑顔で忍足先輩と約束をしていると、向こうは向こうでなにやら約束をしていた。なに、今日一緒に帰るんか!? 「ほんなら部活終わるまで図書室おってくださいね もう一人のやつはさっさと帰してください」 「本読んで待ってるね 部活頑張ったら肉まん買ってあげるよ」 「…善哉が良いッスわ」 ええー、もう一人の図書当番の子のことサラッと流されたけどなんも気にしてないやん…。名字先輩もしかして結構頭切れる人やろか。財前騙すなんてなかなかやで。まあ財前が惚れてるせいでガード甘いのもあるんやろうけど。どっちにしろ…。 「この人らおもろいわぁ…」 |