後輩
「なまえって彼氏いんの?遊び誘っても男いると断るじゃん」 「…あー、うん 一応」 「やっぱいるんだ!同じ学部?」 「違う、かな」 「え、じゃあ経済の人とか?」 「…ていうか、同じ学校じゃない」 「まじ!どこの誰さん?かっこいい?出会いは?」 「な、内緒!」 「なんで!」
年下だからです、なんて言えないよ…。恋ばな大好きなこの子の彼氏さんは大人な社会人だっていうのに、私は子供な高校生だもん。大好きだしかっこいいと思うけど、周りから見たらやっぱり年下、ガキだと思われても仕方ない。質問を繰り出し続ける友達を無視して窓の外を見下ろした。……あ、れ?
「ちょ、急に立ち上がってどうしたの?」 「ごめん急用!代返頼んだ!」 「は!?なまえー!」
講義室を飛び出し階段を駆け降りる。すれ違った先生に何か言われた気がしたけど、ごめんなさい今は話してられない!校舎を出て校門を見れば、窓から見えた場所と同じところに見間違えではなく彼氏が立っていた。
「英二!」 「あ、なまえちゃん発見ー」 「なんでここにいんの!?てか部活は!」 「今日はお休み なまえちゃんこそ授業は?」 「英二見えたから出てきちゃったよ!大学は来ちゃダメって」
「あれ?なまえ、今日講義じゃ…って、誰さん?」
ああもう!見つかった!違う学部の友達は今登校してきたようで、私の隣に立つ英二をジッと見て首を傾げた。後から来たもう一人にも誰かと問われ、私は英二を見たまま動けなくなってしまった。学ランの英二を見れば高校生なのは一発で分かってしまう、せめて弟ということにできれば…。
「なまえちゃんの彼氏です!いつもお世話になってます」 「「え、彼氏!?」」
バカ英二ー!!きゃあっと高い声を出し何年生?とかどうしてなまえと付き合ってるの?とか次々と質問し始める彼女達にガックリと肩を落とした。終わった。明日にはみんなに私の彼氏は年下だと広まっているだろう。英二はちゃんと大人っぽいのに、私はショタコンだというあらぬ噂を立てられるんだ…。マイナスになる思考は、左手を英二に握られたことで止まった。
「なまえちゃん、俺のどこが好き?」 「…は!?」 「この人達が、なまえちゃんのどこが好きって聞いてきたから"可愛くて優しくておっちょこちょいなとこ"って言ったんだけど、そういえばなまえちゃんは俺のどこが好きなのかなーって」 「な、なに言ってんの!?そういうのは普通人に言わないでしょ!」 「えー、そう?」 「良いじゃん、なまえ今まで彼氏のこと全然教えてくれなかったからちょっとくらいは、ねえ?」 「そうだよ!こんなかっこいい子が彼氏なら、そりゃ男紹介してもなびかないはずだよー」 「ちょ!やめてよ!」 「…男、紹介されたの?」
低く呟かれた声にビクッと肩を揺らす。馬鹿でしょこの子達、なんで余計なこと言うかな…!恐る恐る英二の顔を見れば、微かに眉が上がり大きな目を細めて私を見てきた。ああ、今日は私占い最下位だったのかな。
「なまえちゃんは俺だけのものだよ」 「「〜きゃぁああ!」」
言うと同時にキスをかました英二。向かいに立ってばっちり見ていた二人は笑顔で悲鳴を上げた。ちゅっとすぐに離れたけれど、その目はどう考えても次を狙っている。
「帰る!!」
これ以上大事にされたらこれからどんな顔して学校通えば良いのか分かったもんじゃない。早足で校門を抜ければすぐに英二が追いついて隣を歩き始めた。
「…怒った?」 「怒るに決まってるでしょ!なんでキスする必要があるの?」 「だってムカついたんだもん」 「か、かわいこぶったってダメなんだから…」 「なまえちゃんのイジワル」
プクーッと頬を膨らませる英二に、すでに怒りが萎み始めている。ずるいよ、好きだから怒れないじゃん。人前は嫌だけど、キスは嬉しいもん。取られた手を払えないくらいには、もう英二のこと許していて。俯いて怒ってるフリ続けるのもそろそろ限界かもしれない。
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