幼なじみ



「好きな人と4人グループ作ってー」

先生の言葉に一気に教室が騒がしくなった。大事な修学旅行の班だから本当に仲の良い子達で固まるのは当たり前。私は小学校から一緒の子と二人、どうしようかなんてのんびり話していた。この子が一緒なら、後は誰でも良いし。

「あ!なまえ達二人?」
「そうだよー」
「良かったあ!俺達と組んでー」
「良い?」
「私は誰でも 英二君なら喧嘩することもないし良いんじゃないかな?」
「ん、そうだね 良いよ英二」
「よっし 余んなくて良かった…」

ふう、と息を吐き出す英二に思わずため息が出た。何を言っているんだろうこの人は、英二が余るわけないじゃん。今まで英二を見つめていた女の子達が一斉に私を睨んできた。うわー、こわーい。気づかないフリでどこを回ろうかと話しはじめた。



修学旅行当日。いつの間にか決まっていた新幹線の席は英二の隣だった。誰が決めたのか知らないけれど、気を張らずにいられる英二の隣は楽だから良い。窓の外を見ながらお菓子を一緒に食べた。私の友達は英二の友達と何やら楽しそうに話していた。

「なまえー」
「んー」
「トランプしようよ つまんない」
「しりとりじゃダメ?」
「なまえの顔見てたいのー」
「…まあ、良いけど ババヌキ?」
「うん!」

サラッと言われると私が困る。何にも意識してないような笑顔にデコピンをくらわせた。



新幹線から下りてすぐ、有名なお寺に行くためバスに乗った。地に足をつけたい。またもや英二の隣だったけれど今度は私が通路側、窓の外を見ようとすると英二と目が合うから俯いて寝たフリをしていた。途中本当に眠くなって寝た気がするけど起きた時も同じ体勢だったから大丈夫だよね。

「なまえって昔から寝る時眉間にシワ寄るよね」
「…気づいてたんだ」
「だって呼んでも無視すんだもん」
「ごめん」

"もん"じゃないよ。中学生男子が何言ってんの、可愛いじゃないか。



旅館について荷物を下ろすとやっと修学旅行に来た気がした。実際国宝とかよく分からないし。ボフンとベッドに倒れ込むと同時に部屋のドアがノックされた。

「頼んだー」
「うん 誰ですかー?」

友達が入口に向かったのを見送って再びベッドに沈み込んだ。ふかふか、気持ちいい。結局誰が来たのかが気になり顔を上げると、英二が目に入った。…おい?ここは女子部屋だぞ?

「なまえ、ちょっと良い?」
「なにー?先生に見つかったら怒られるよー」
「うん だから一瞬」

そう言いしゃがんだ英二は私の耳元に顔を寄せた。「点呼終わったら非常階段きて」それだけ呟いて走って出て行った英二の後ろ姿をぼうっと見ていると、どこに行っていたのか友達が戻ってきた。

「英二君と話せた?…みたいだね 話聞こうか?」
「…わ、わかんない、けど」

雰囲気が、なんかいつもと違った。一度だけ感じたことのあるあの空気は、もしかすると告白のそれかもしれなかった。そして、熱を感じる頬で私は自分の気持ちに気づいてしまった。頑張って、と笑う友達にうまく笑い返すことはできただろうか。


  






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