お兄ちゃん
風邪を引いた。朝起きたら頭が痛くて、でも朝ごはんを食べたら元気になるかと思ったから起き上がったら、…階段から落ちた。ふらついてしまって足が言うことをきかなかったんだ。ドンッ、と大きな音を立てて階段の下に倒れ込んだ私のところに一番にきてくれたのは英二お兄ちゃんだった。ゆっくり一人で立ち上がると、泣きそうな目で見てきた。頭は痛いけど思考ははっきりしている、大丈夫だ。
「ごめん、ちょっとふらってしただけ」 「頭ぶつけてない?身体大丈夫?」 「うん、多分大丈夫」 「本当?…って、あつ!え、なまえ、風邪引いた?熱あるでしょ」 「…うん、多分」 「無理して歩いちゃダメだよ!学校は休みね!ご飯は、ちゃんと食べよう でもおかゆ作るからちょっと待ってて」 「ごめんね…」 「良いから、病人は寝てなさい?」 「うん」
大人しく頷くといいこいいこと頭を撫でられた。お兄ちゃんはリビングへ走っていってしまったので自分の部屋に戻り布団に潜る。うーん、暑い。窓開けたらちょうど良いかな。手を伸ばして窓を開けると涼しい風が吹き込んでくる。…あれ、寒い。
「熱さまシート…なまえ、なんで窓開けてんの?」 「暑かったんだけど、なんか、寒いかも どうしよう」 「風邪だから暑いのしょうがないの!冷たいの貼ってあげるから、窓閉めるよ」 「うん、ありがとう」
やっぱり思考もだめになってるのかもしれない。ぴたっと貼られた熱さまシートに頭の熱を吸い取られる感じが気持ちいい。寒気がして布団に潜ると、優しくぽんぽんと叩かれた。
「おかゆすぐ持ってくるから、ちゃんと寝てて」 「うん …お母さん達行った?」 「ん?姉ちゃん達もみんな行った 学校には電話したからゆっくり休んで良いよ」 「…お兄ちゃんは?」 「俺は、なまえの看病のためお休みします」 「そっかぁ ごめんね…でも、嬉しい」 「…うん じゃあ待っててね」 「はぁい」
さっきまで寝ていたのに容赦なく襲ってくる眠気でフニャフニャとはっきりしない声が出る。布団を被っているせいで余計聞き取りにくいだろう。でも、そうか、英二お兄ちゃんはずっと家にいてくれるのか。一人はちょっと寂しいと思っていたからすごく嬉しい。英二お兄ちゃんが風邪を引いたら絶対に私が看病しよう。そんな決意をしたところで意識は落ちていった。
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