エクスタピアス(白石蔵ノ介、
忍足謙也、財前光)



私は白石蔵ノ介の幼なじみだ。生まれた時から今まで、幼稚園・小学校・中学校に一緒に通っている。優しい兄みたいな存在で(同い年だけれど蔵ノ介が大人っぽいから)、悩み事があったら家族より先に蔵ノ介に相談していた。

「好きな人ができた」
「なん、やと…!」
「金髪の人とよく一緒にいるんやけどね」
「不良!?やめとき、怪我するで」
「その人は黒髪だもん」
「ピアスは?」
「…いっぱいしてる」
「不良や!」

ちょっと過保護気味でも、きっと私を心配してくれているから、…だよね?小さい時から"好きな人"の相談をするとこうなるから、ちゃんとした人と付き合えっていうお兄ちゃん精神なのかも。結局その日は「話しかけたらダメやで!声かけられたら無視せえ」と言われて相談は終わった。無視なんてひどいことできないよ。


「あ、」
「おうなまえ …どうした?」
「ちょ、ちょっときて!」
「え あ、謙也先行っといて」
「おー」

階段の陰まで蔵ノ介を引っ張っていきグッと近寄ると、目を見開いて少しのけ反られた。蔵ノ介さん、私が言っていた金髪の人とは彼のことなのですが。彼のお友達が私の好きな人なのですが。

「どうしたん?」
「あの人!」
「…謙也?」
「いや知らんけど!あの人金髪!」
「え、ああ 確かに金髪やけど、不良とかとちゃうで?」
「違う!この前話したやろ、その…好きな人、と一緒にいた金髪の人」
「…え、え 嘘やろ 謙也?謙也と一緒にいたピアスつけてる黒髪て…嘘やろ…?」

びっくりと絶望の混ざったような、どちらかというと絶望が大きいような顔をされた。

「知り合いなん?」
「…部活の後輩や」
「えっ、年下…」
「そう年下!やから話合わんやろ」
「私バカやからちょうど良いかな」
「なんでやねん!」

予鈴が鳴りその場は分かれたが、彼が蔵ノ介の後輩ならちょうど良い。蔵ノ介と後輩くんと、謙也くんって人と私、4人で遊べば良いんじゃないか。私が入っていくのはだいぶ無理ある気がしなくもないが、蔵ノ介の幼なじみっていうのは学校の子達に大きな影響力があるから大丈夫だろう。



「名字なまえです 蔵ノ介の幼なじみです」
「えっ、幼なじみ!?良いなあそういうの」
「別になんも良いことないと思うで?」
「良いねん!雰囲気が!幼なじみって感じが!」
「…そうなん?謙也くん、やったっけ?面白いなぁ」

第一の誤算。おまけの謙也くんが予想外に賑やかな子だった。なんだろう、弟にしたら楽しそうな感じ。
第二の誤算。財前くん、怖い。

「あ、せや財前 この前借りたCDもうちょい借りとって良いか?」
「延滞料取りますけど」
「ひどっ!先輩やで!?」
「先輩?おりませんけど?」
「白石ぃ〜」

無表情で毒舌を吐くその様子は悪魔そのものでした、はい。だいたいの餌食は謙也くんだからまあ良いんだけど、時々鋭い目でこちらを見るのはなんなんだろう。喧嘩売られてるのかな。キモいんだよ、みたいな?うわ、私好きになる人間違えた?

「なまえ」
「…蔵ノ介、なんで教えてくれないの」
「言うたやん 話合わんって」
「…ごめんなさい」

ペこりと頭を下げるとよしよしと撫でられた。謙也くんが羨ましそうな目で見てきた。財前くんが近づいてきた、って、え。

「名字さん」
「うぇっ、はい!」
「俺、色々言うん謙也さんだけなんで」
「…え?」
「好きな人には優しくするタイプッスよ?」
「え、…え」
「「(絶対嘘だ…!)」」

ダメだ、キュンときた。








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