指切りげんまん | ナノ


片耳イヤホン 


「んー」
「どうしたの沖田ちゃん さっきから唸ってばっかだけど」
「…高尾くんって、ロックとか聴く?」
「聴くけど…え、沖田ちゃんもロック聴くの…?」

沖田ちゃんのほわほわした雰囲気とロックって結びつかないんだけど…。
驚いている俺を見ておかしそうに笑った沖田ちゃんは鞄から一枚のCDを出した。
それは有名なバンドのベストアルバムで、俺も持っているものだった。

「弟がね、こういうの好きみたいで貸してもらったの でも、私CD聴けるもの何も持ってないんだよね どうしようかなーって思って」
「ああ、なるほどね… そのCDなら俺の携帯に入れてあるけど、聴く?」
「え、本当?高尾くんもこのバンド好きなの?」
「うん、結構好き 多分女の子でも聴きやすいと思うよ」
「高尾くんが好きならちゃんと聴いてみたいなぁ」

…て、天然なのかな。
はにかんだ沖田ちゃんは、CDの歌詞カードをパラパラと見てどれが良いか考えているみたいだった。
落とされた爆弾にHPを削られつつも、携帯を操作し俺の好きな一曲を探し出す。
イヤホンを携帯に差して沖田ちゃんに渡すとパアッと笑顔になってそれを耳にはめた。
曲を再生し始めると沖田ちゃんは目をつむって音楽に集中していた。
そんな沖田ちゃんを見て、俺のイヤホン使ってるんだよな…沖田ちゃんが使ったイヤホンをこれから俺も使うんだよな…なんてキモいことを考えていた。

「高尾くん、好き」
「…えっ?」
「私これ好きかもしれない 他にもオススメの曲ある?」
「えっ、あ、ああ、うん、ちょっと待ってね」

いやいやいや、落ち着け俺。
沖田ちゃんはこの曲が好きって言っただけ、だけだから。
なにちょっとときめいちゃってるんですか。
ばくばくとうるさい心臓を押さえ込んでまた曲を再生し始める。
この曲が終わるまでに落ち着けよ俺。

「ありがと やっぱり私このバンド好きだな もっといろんな曲聴きたい」
「そ?言ってくれたらいつでも聴かせてあげるぜ」
「本当!?じゃあまたお願いするね 弟に頼んで私の携帯にも曲入れてもらおうかなぁ」

幸せそうに笑った沖田ちゃんが可愛過ぎて俺のHPはガシガシ削られていった。



「沖田ちゃん、ちょっと聴いてほしい曲があるんだけどさ」

この前のバンドが好きならこっちのバンドも好きかもよ、と笑って言えば目を輝かせてイヤホンを受け取る。
ははっ、沖田ちゃんがロックにハマるなんて思わなかったな。
俺の好きなバンドの曲をいくつか聴かせると「私これも好きだ」と驚いたように言った。
そりゃ、俺イチオシのバンドですし。
この前の曲と似た雰囲気で、沖田ちゃんが好きそうな曲探しましたし。
なーんて心の中で思って、表面上は優しい笑顔を浮かべる。

「私も弟に色々オススメ聞いて気に入った曲あったから、高尾くんも聴く?」
「ん!聴く!」
「じゃあこっちつけて」

はいっと当たり前のように渡されたのはイヤホンの片側。
反対側は沖田ちゃんの耳に入れられた。
…えーっと、イヤホン半分こすんの?
ステレオだから両方つけたい!なんてことは全然ないんだけど、一つのイヤホンを二人でするという、この、感じが。
かぁーっと熱くなる感覚がして窓に映った自分を見れば恥ずかしいくらい真っ赤になっていた。
男は勢いだ!とイヤホンをはめる。
必然的に沖田ちゃんと距離が近くなり、外れないようにするため椅子を隣に寄せて座った。
耳から聴こえてくるバンドの曲はなかなか好きな雰囲気だが、それよりもこの状況に幸せを感じている。
沖田ちゃんはまた無防備に両目を閉じていて、俺は横目で沖田ちゃんの顔を見つめ続ける。

「どう?良い曲じゃない?」
「…最高」
「じゃあ今度このバンドのCD貸すね!」

そっちじゃねえけどまあいいか。
椅子の上で体育座りをして赤い顔を隠した。
沖田ちゃんは不思議そうに首を傾げていた。

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