いざ初投稿


財前くんと忍足は部屋が狭いからリビングに行き、侍さんと二人で録音に挑んだ。緊張する、すごく緊張する。侍さんと二人っていうのもだけど、私、歌うの?本当に歌えるの?

「緊張する?」
「…はい」
「せやな 初めては俺も緊張したわ」
「侍さんも?」
「やから、俺もただの高校生」
「…はい」
「楽しくやろう (笑)動画なんやから」
「…はい!」

ニコッと笑うと侍さんが頷いてGOサインを出した。流れ始める音楽。ピッタリのタイミングで歌いはじめた。ああ、楽しい、好きだ。歌うのが好きだ。善哉Pさんが好きだ。この曲が、大好きだ。歌っている間に気持ちが高ぶって少し涙が出たけれど声は震えなかった。最後の一音を伸ばして目を開けると侍さんが腕で丸を作っていた。一発OK、良かった。

「ありがとうございました」
「完璧 俺も泣きそうやった」
「うわぁ、本当ですか」
「ミックスにも力入れるな 出来たらすぐ送るから」
「お願いします」

熱気の篭った部屋から出てリビングへ向かった。のんびりとジュースを飲みながらテレビを見ている二人。結局財前くんは何をしに来たんだろうか。侍さんにジュースを貰い私もソファに座った。忍足が少しずれてくれたので狭くない。こんなところで気遣えるとか、だから好きだ。侍さんが部屋に戻りミックスをしている間、私達3人は何をするでもなくテレビの画面を見続けた。



「栞さん、明日には送れそう」
「ありがとうございます」
「…財前今日も泊まるん?」
「そのつもりッス …栞さん?」
「え、はい…?」
「俺、財前光いいます」
「…瀬戸栞です」
「これからよろしく」
「…はい」

最後まで無表情で居続けた財前くん。何をよろしくされるんだろう。パシリとかにさせられないよね、大丈夫だよね。忍足を見ると"うわぁ…"みたいな目で財前くんを見ていた。今日は失礼な奴だな。3人まとめて侍さんの家を出て、忍足達は私を家まで送ってくれた。紳士か。



次の日侍さんから送られてきた音源は素晴らしい出来だった。私の声なんだけど私じゃないみたい。ボカロには勝てないけれど、予想を超えるそれは初投稿として文句のないものだと思う。

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