繋がる線


朝図書室の鍵を閉めて、どうせ放課後開けるのも私だからと鍵を持ったままだったから、なんの問題もなく図書室に入り込むことができた。"休館中"の札を出せば休み時間でも誰かが入ってくることはない。完璧に、二人きりだった。

「瀬戸先輩ってどんな人ッスか」
「…え?私?私がどんな人か私に聞いちゃうの?」
「自分のことは本人が一番分かるやろ?」
「そうだけど…」

どうやらただサボるだけでなくお話をしなくてはいけないらしい。あんまり財前くんのことよく知らないし、良い機会なんだろうか。誕生日やら血液型やら、そういう基本的なことだけでなくボカロのどの曲が好きかとかその曲のどこが好きかとかまで聞かれて戸惑った。私がボカロ好きって言ってたの覚えてたのか。この前は漫画の話ばかりしてたから、財前くんはボカロにあまり興味がないのかと思っていたんだけど…。

「先輩、歌うまいッスか?」
「え… いや、あんまり」
「ふーん」

うまくはないけど、歌い手やってます。…とは言えない。謙也は投稿の仕方を教えてもらうために、蔵ノ介くんは侍さんとして、必要だったから言っただけで。関係のない財前くんには言わなくて良いだろうし、学校の人にはできるだけ言わないでおきたいから。
なにやら考え込んでいた財前くんはパッと顔を上げて私と目を合わせた。

「先輩ツブッターやっとります?」
「…や、やってるけど…?」
「フォローしたらあかん?」
「…ちょっと待って」

財前くんに断りを入れてから携帯を開き、自分の呟きを見返す。最近は(笑)動画について…呟いてないね、うん。リンクもしてないから多分大丈夫。

「ID教えたら良い?」
「ありがとうございます」
「ん」

私が言ったIDを携帯に打ち込んでしばらく操作をしていた財前くんは、フッと笑ってから画面を見せた。

「このアカウント?」
「うん、そう」
「…俺がサボってること言っとるし」
「あ、…ごめん」
「別に良いけど フォローしときます」

歌い手ってばらさないことに必死になってて財前くんのこと呟いたの忘れてた。それ見て笑ったのか…。

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