幸村



同じ委員会になったのをきっかけに好きになったわけだけど、いちいち反応が可愛くて今にも好きって言ってしまいそうなんだ。今の関係を壊すのが怖い、なんてありきたりなことを言うくらいには名字が好き。

「ゆきむらー」
「なに?」
「ふへへ」
「え、なにその笑い声 女子として終わってるでしょ」
「えへへ」
「それは可愛いから許す」
「やった あ、ちがくて」
「ああ、何の用?」

冗談と少しの本心を混ぜながら、いつものように話すだけ。笑った顔にどれだけ癒されることか。

「委員会一緒に行こー」
「…もうそんな時間か」
「お昼ご飯食べ終わってる?」
「うん じゃあ行こうか」

委員会の召集が面倒だなんて一度足りとも思ったことがない。活動内容が良いってこともあるけれど、それ以上に名字が一緒だから。好きな子と一緒にいられることが嫌な奴なんていないだろう?

「…えっと、なんで手繋ぐんですか?」
「名字が迷子にならないように」
「学校でどう迷子になるの!」
「冗談だよ ただ俺が名字と手繋ぎたかっただけ」
「…っ」
「あは、照れた」

赤くなった頬に手を添えると目を逸らされてしまった。生意気な子って従えたくなるよね。あ、本音出ちゃった。
パンッと手を払われたのは結構ショックだったけれど、照れてるからの行動だと分かっているとただ小さな子が虚勢張ってるようにしか見えない。

「ばか!幸村のばか!」
「可愛いなあ」
「頭撫でるなあ!」

ポカポカと叩かれる力は何か当たったかな?程度。こんなの愛情表現に感じちゃうよ?サラッと髪の毛を一束掴むとまた赤い顔で固まって。なんかもう、可愛いって言葉しか出ないなあ。

「キスして良い?」
「なっ き、きすって」
「名字がキスとか言うとエロいね」
「うええ…」
「あ、その顔可愛い」
「もう先行く!幸村なんか知らない!」
「はいはい一緒に行くよ」
「ついて来ないでよ」
「目的地同じだからねー」
「幸村のばか」

"ばか"ってさ、"すき"にすごく似てるって思うんだ。

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