越前



「雪だぁ!」
「…寒くないの」
「寒い!けど楽しい!」
「良かったね」

外に飛び出したなまえは地面に積もった雪を触り笑っていた。手袋をしていないからきっと後で霜焼けになるだろう。泣きついてくることが予想できてため息をついた。家の中から冷めた目で見ていると、小さな雪玉を作り近くの壁にぶつけてきた。粉々になった雪を見てまた楽しそうに笑うなまえの考えは、俺には理解できない。

「リョーマも出てきなよ」
「寒い」
「冬生まれのくせにっ」
「そっちは夏生まれのくせに暑いの嫌いじゃん」
「だって暑いんだもん」

舌を出し、静かに落ちてくる雪に手を伸ばした。何が楽しいのかその表情から笑みが消えることはない。今までになく幸せそうな彼女に口元が緩む。黙ってれば絵になるのに、黙ってれば。

「リョーマ!」
「なに」
「誕生日おめでとう!」
「…ありがとう」
「リョーマが明日生まれだったら素敵だったのになあ」
「…なにが?」
「あ、でも今日もあり?イブでもクリスマスだし」
「人の話聞けよ…」
「リョーマが、クリスマスプレゼント!」
「…は?」
「南次郎さんにとってもリョーマのママにとっても、私にとっても、リョーマはサンタさんがくれたプレゼントなんだよ」

恥ずかしげもなく言い切ったなまえは、パタパタと駆け寄ってきて俺の頬に触れた。冷たく濡れる手に家の中で暖まっている俺の手を重ねる。また、幸せそうに笑った。

「最高のクリスマスプレゼントだね」

ぐっと引き寄せ唇を合わせる。俺にとっては、なまえに祝ってもらえることが最高のプレゼントだよ。


Happy Birthday!
   and
Merry Christmas!


- ナノ -