菊丸



(すごく短いです)

数学の時間が自習になった。ざわざわと騒がしくなる教室の隅で配布されたプリントに取りかかる。早く終わらせて、寝よう。

「なまえー」
「なに?」
「ここわかんない」
「…しょうがないな」

振り向いて問題を指差す英二。ちゃんと勉強しようとしてるなら教えますよ。教科書を忘れたという英二に自分のものを広げて見せつつ、ゆっくりと説明を始めた。
分からないところをすぐに言ってくれるし理解力が高いのでプリントはすぐに完成。ありがとうと笑う英二に適当に返事をし机に伏せた。眠いのよ、寝かしてください。目をつむり周りの情報をシャットダウンした。

「…寝ちゃうの?」
「んん…」

私に気を使っているのか小さな声。優しいなー、でもごめんね、寝て良い?はっきりしない意識の中で誰かが頭を撫でた。英二かな、英二しかいないね。分からない程度に上がった唇を隠して眠りに落ちた。

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