菊丸



「なまえは猫派?犬派?」
「猫派!絶対猫!」
「え、そんなに猫好きなの?」
「うん、大好き」
「…ずりぃなー」

拗ねたように口を尖らす英二。何がずるいんだろう、私何かした?首を傾げると少し顔を赤くして機嫌が悪そうな顔をした。照れ隠しだね、分かりやすい。

「なまえに好きって言われて、猫ずるい…」
「…まさかの猫に嫉妬」
「なまえは俺だけのものなの!」

そういうことを急に言わないでよ。嬉しくなっちゃうじゃん。俯いて熱を持った頬を隠すと、英二は慌てて「え、嫌だった?うそ、ごめんね?」と泣きそうな声で言うから、英二を泣かせるわけにはいかない私は顔を上げて少し笑ってみせた。嫌なんじゃなくて恥ずかしいんだよ、気付いてよ。

「…なまえ、ほっぺ赤い」
「なんでかわかんないかな…!」
「え?」

このボケボケ英二!あんたが恥ずかしいんセリフ言うからでしょうが!睨んでも全然効かないから諦めて英二の手を掴んだ。ピクッと動いたけれど握り返してはくれなくて、変なところで意地張るなあ本当。

「…英二って猫みたいだよね」
「え…」
「私猫好きなんだ」
「…うん」
「…どういうことか、分かる?」
「なまえーっ!」

手を握るだけじゃなく跳ねながら抱き着いてきた。首絞まってるけど英二が嬉しそうだから良いかなぁなんて。うん、でも本当に苦しいからそれ以上力入れないでね。結構危ないから。そんな心情を表に出さず英二を抱き着き返した。この場所が好き。英二の腕の中は暖かくて心地好い。

「なまえはペット飼っちゃダメだよ」
「なんで?」
「猫にちゅーとかしてたら俺泣くもん」
「…英二のヤキモチ妬き」
「なまえ大好きなんだからしょうがないじゃーん」
「開き直るな!」

笑いながらじゃれあって、そのまま触れるだけのキスをした。英二と結婚したらペットどころか子供にも嫉妬しそう。誰がいても一番は英二なのにね。

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