あねご
※3Z



「妙ぇ〜妙ぇ〜」
忌ま忌ましい。こいつに姐御の名前を気安く口にしてほしくない。
「たえたえたえたえー」
「うっせーんだヨ!気安く姐御のこと呼び捨てにすんじゃねー!!」
あまりにも連呼するから苛々が最高潮に達し机を力の限り殴りながら椅子から立ち上がった。
机は粉々になって塵がまっていた。
「なんでお前が返事するんだよ。俺は妙に話しかけてんだけど」
この野郎。なんだその殺気立った顔は。こっちだってお前が姐御に気安く話しかけなければ話しかけたりしねーヨくそが。
「あらあら兄妹喧嘩?珍しいわね」
隣にいた姐御がいつもみたいに綺麗に笑いながら言った。
「やだなー妙、こんな弱っちいのと俺は兄妹なんかじゃないよ」
この野郎もいつもみたいに薄っぺらい笑顔で姐御に言った。(ただし姐御に向かう時は他の奴と違って殺気は全く感じない)こいつの笑顔は姐御みたいに全然綺麗じゃない。見てるといらついてくる。
「そうネ姐御!こんな根本からいかれてる奴と兄妹にしないでほしいアル!」
言われっぱなしだと悔しいので私も姐御に言ってやった。
「でも喧嘩するほど仲がいいって言うでしょ?私もたまに新ちゃんと喧嘩するのよ」
姐御と喧嘩して新八が完膚なきまでにぼこぼこにされる様が簡単に想像できた。
「姐御、仲がいいとか悪いとかじゃないアル。こいつには負の感情しかわかないネ」
「そうだよ妙、しかもこいつ俺達の仲を邪魔するんだよ」
「私達の仲ってなんですか。ふざけたこと言ってるとリコーダー鼻の穴に突っ込みますよ」
ふんざまあみろ。姐御にそう言われて珍しく肩を落としている奴を見下して鼻で笑ってやった。そしたらまた殺気立った目で睨まれた。
「冷たいー妙」
またすぐ姐御の方を向いて近づこうとしている。おい近いんだよ離れろや。今度は私が殺気立った目で睨む。
「神威さんの方がお兄さんなんだからちゃんと神楽ちゃんに優しくしなきゃだめですよ」
姐御はこいつの話をあまり聞いていないようでまだ兄妹喧嘩とゆうことで話を進めている。
姐御、違うんだヨ。こいつとはほんとに兄妹なんて名前だけなんだヨ。
「だから違うって妙ー。俺は妹なんていないよ」
これだけはこいつと意見が合う。
「そうヨ姐御。こんな奴とはなんの関係もないアル」
「何言ってるのよ神楽ちゃん。あなたたち家族でしょう。血が繋がっているのでしょう?」
家族。正直こいつと同じ血が流れているのは心の底から嫌だった。
「家族は大切よ。どんなことをしても家族は繋がっているの。切っても切れない縁なんて素晴らしいことじゃない。たった1人のお兄さんでしょ」
黙っていると姐御はそう続けた。そんな姐御の笑顔はいつもの数倍綺麗だった。家族が何よりも大切なものだと知っているんだなと思った。
やっぱり姐御には敵わないアル。
姐御にそう言われればこんな腐った奴でもちょっとぐらい兄貴と思ってやってもいいかなと思える。ほんとにちょっとだけだけど。
こいつも姐御に「神威さんもたった1人の可愛い妹じゃない」と言われて、こちらをちらりと見やった時に目が合った。どこが可愛いの?とほざいた奴にうっせーヨと毒づいた。たださっきの殺気立った目とは違う目だった。
どうもこの辺はほんとに気が合うらしい。
「ほら仲直りして。はい握手」
私とこいつの手を姐御が取って握手をさせられた。思ったより暖かかった。
ただ2人とも姐御にばれないように少し憎しみを込めて力を入れた。
「はい、仲直りしたから妙も俺と握手」
またすぐ姐御の方を向いてふざけたことを言っている。
「なんで私が握手するんですか」
姐御はやれやれとゆうような顔で軽くあしらっている。こいつは姐御のこと何も知らないネ。
「いいじゃん握手ぐらいーねーねー妙〜」
しつこい奴アルな。ちょっと認めてやったからと言ってもこれだけは許せない。
「たえたえーたーえー」
「神威さんしつこ「気安く呼ぶなって言ってんだろぉぉお!!」
姐御が拳を握るより早く本日2度目の怒声をあげた。
「なんだようるさい奴だなー」
「いいかよく聞けヨ!天上天下唯我独尊だかなんだか知らないけどなぁ!姐御のこと気安く呼び捨てにするのは許さないアル!!」
「意味わかんない。いいじゃん妙にダメだって言われないし。大体そっちこそそのぎこちないアルアル言葉やめたら?嘘くさいよ。ねー妙」
また薄っぺらい笑顔を張り付けたまま言われた。
「んだとぉぉぉお!?てめぇこそいまどき長ランなんて流行んねーんだヨ!!しかもいちいち姐御に近づくな!姐御を呼び捨てにするな!!姐御のことを呼び捨てにしていいのはなあ!
世界にただ一人アル!」
ほんとにこいつは姐御のことを知らない。私の方が姐御のことわかってるアル。
「なにそれ誰だって言うんだよ」
こいつに張り付いた笑顔が少し消えた。
姐御もよくわからないといったような顔をしている。
姐御はいつも綺麗だけどもっと綺麗になる時があるネ。しかもそんな時は決まって隣にあの男がいるアル。
「それはな!」
そう言って勢いよく教室のドアが開いていて見える廊下の方を指差した。
そこには違うクラスの先生と立ち話をしている我がクラスの担任が見えた。

勝った。
言ってやったアル。何も知らないこいつに教えてやった。
見たことがないような呆けた顔のこいつを見て、その満足感のせいで姐御はどんな顔をしてるかは見忘れたが、指差した先の銀髪が周りにばれないように右手の親指をたてているのは見逃さなかった。




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