捧げ物 | ナノ


▼ 女心と春の空 (5/13)

「サクラといのが食材の買い出し」

名前は、淡々と説明を続けた。

「で、二人がヒナタの家に運んで、ヒナタは、今日中に料理の下ごしらえ」

大量の食材の保存場所や、大人数での調理場所確保を考えると、日向の広い屋敷は最も適当な場所。
この役割分担を決めたのは、名前だと言う。

「明日は私とテンテンさんも加わって、くノ一総出で調理に取り掛かるの。サクラの腕前は期待できないだろうけど……ね、いのって料理できたよね?」

「さあ、野営の時も基本魚は丸ごと食ってたし、そういや、まともに包丁使えるのかすら知らねぇかもな」

「え、それ困る! ヒナタは料理上手そうだけど取り仕切るの苦手そうだし……」

「まあアイツは昔から何でも器用にこなしてたし、問題ねぇだろ。それにくノ一はまだ他にもいんだろ?」

名前の事を指したつもりが、名前には端からその選択肢はなかったのか、オレの予想とは違う方向に話が進む。

「あー、うん。テンテンさんね……。何か言っちゃ悪いんだけど、私、あの人の忍具捌き見てると、男らしい調理法をしてるとこしか思い浮かばない」

そう言われると、まざまざと思い浮かべられる。
空中に放り投げた野菜をクナイで細切れにする姿や、離れた場所から跳び上がって油に種を叩きつける姿などが。

「さすがに……それは偏見だろ」

「だよ、ね」

オレの否定を名前は肯定したものの、苦笑いを浮かべた様子から察するに、その一方的なイメージまでは払拭しきれていないようだった。

そんなこんな話す内に、いつの間にか商店街からは抜けきっていた。
それにつれ、住宅街が広がっていく。
任務を終えすれ違う忍の中には、知り合いの顔もちらほらあった。
ある人には声をかけられ、ある人には気づかなかったふりをされ。

アスマと紅先生たちは後者だった。

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