捧げ物 | ナノ


▼ 女心と春の空 (3/13)

――この間、いのがサクラとお茶屋さんに行ったんだって。


数日前、名前がオレの家で親父所蔵の医学書に目を通していた時の事だ。
何でもない事だが思い出したから言ってみた、という口ぶりで話し始めた。

五代目の弟子となったサクラは、同じく医療忍者を目指すようになったいのと、里の老人を中心に定期検診を任されていた。
通院が不可能な人も担当するからか、時には一日かけて里を巡回する事もあるらしい。
他にも仕事は詰まっているし、過密なスケジュールを考えると、昼飯を食う時間も惜しい。
そのせいか、自宅や職場よりも、手近にあった店で軽食をとる方が多いと、オレもいのから聞いていた。

――それでね、その店に入ろうっていのが誘ったら、サクラが急に辛そうな顔になったんだって。

その直前に風邪をこじらせていた老婆に薬を処方していた事もあり、いのはサクラの体調が気にかかった。
そして尋ねたらしい。
どうしたのか、と。
それに対してサクラはこう答えたという。


――ここ、二年前に桜が咲いていた頃は、一緒に座ってたのよね。私とナルト、それからサスケ君も……


名前はその性格が故に自分が戦闘に向くタイプではないと自覚して以来、サクラたちと同じく医療の道を志していた。
しかし医療忍術に必要な繊細なチャクラコントロールの才能が名前にはなかった。
だから名前は、サクラが五代目に教えを乞うたように、オレの親父に頭を下げた。

幸い何をするのものんびりしていた名前も、地味な作業を正確にこなすのは得意中の得意で、薬の分量を正確に計り調合する薬剤師の仕事は向いていた。
そんな事情で病院に勤めていたいきさつもあり、名前は職場を同じくするサクラといのを、他の同期の誰よりも近くで見てきた。

チームメイトの半分が里にいないのに、決して寂しさを見せないサクラ。
ライバルと称し常に競い合いながら、親友でもあるサクラを気遣ういの。

全員が中忍に昇格し、十班が解散してしばらくした後、オレは町中でいのを見かけ、話しかけた事がある。

――何かさ、今まで毎日隣にいた人がもういないのって、やっぱり寂しいわね。

イルカ先生に勝手にチーム決め発表された時は、こんな班ありえない、って思ってたのに。
その時いのは、アスマにもらったピアスに触れながらそう言った。
オレはそれを、単に新しい持ち場に不安を感じての発言だと受けとった。
しかしオレの話を聞いた名前は違うものを感じていたんだろう。
そしてその話をずっと忘れずにいたんだろう。


――シカマル、お花見しよう!


思い立った名前の行動は、何時になく早かった。

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