捧げ物 | ナノ


▼ かくれんぼの続き (9/10)

――あの日、
私たちはひたすら砂にまみれていた。


そんな私たちを迎えに来たのは、テマリさんとカンクロウさんだった。

「我愛羅、砂遊びはそろそろ終わりだ」

私はテマリさんが我愛羅を見つけた時、手練とは思えないほど無防備に気を緩めたのを知っている。
以前は恐れしか宿していなかった二人の目に、今の我愛羅は可愛くて仕方ないけれど困った弟として映っているようだった。

「それから鬼ごっこもやめにするじゃん」

そしてカンクロウさんの言葉を合図に、暗部たちも姿を現した。
幻想的な雰囲気を醸していた公園は、武装した忍に占拠され、物々しさが強調されていった。

物陰からこちらを窺っていた最後の一人まで出揃うと、私と我愛羅は立ち上がった。
我愛羅はその足で姉兄の方へ歩み寄り、私は暗部入隊を志願し、暗部に向かって頭を下げた。
しかし風影室でやらかしてしまった分、相手の反応はすこぶる悪かった。

「一度口にした事を簡単に曲げるとは、どういった心境変化だか。そういう輩は戦地で敵側につき砂を裏切ると相場が決まっている」

特に風影室でもバキさんと渡り合っていた人は一歩も譲らなかった。
持ち得た言葉の限りを尽くして忠義を誓っても、首を縦には振らない。
しかしそれは私を毛嫌いしての反発ではなく、純粋に風影様の身を案じての意見だと私も薄々感づいていた。
そこでその風影である我愛羅が助け舟を出した。

「オレが暗部を出し抜き姿を眩ませた時、誰よりも早く見つけたのは誰だったか」

ここまでくるとその言葉の前に入隊を反対していた者も渋々承諾するしかなかった。
しかし中には、悔し紛れにこう呟く暗部もいた。

「図に乗るな。お前より優れた感知タイプは他にもごまんといる」

……少しも傷つかなかった、訳ではない。
それでも我愛羅に自信をつけられ、過剰に得意げになっていた私にそれが通用するはずもなく、

「私の感知は術ではありませんから、チャクラの消費は皆無。その上感知しながらでも戦えます」

とやり返せば、

「生意気だな。まずはその減らず口から叩き直してやる」

楽しそうな響きが頭上から聞こえ、避ける間もなく小突かれた。
その人が後に私の先輩となった。

その先輩に日々しごかれ、
飛ぶように毎日が過ぎていく――




そうして何ヶ月経った頃だったか。
我愛羅が暁にさらわれた。

カンクロウさんは敵の毒に侵され、駆け付けたテマリさんが部下を引き連れ奪還に向かう中、同盟国の木ノ葉も腕の立つ忍を派遣してくれた。
その中には我愛羅の言っていた“どんな困難にも真っ正面から立ち向かう強い奴”もいて、我愛羅は何とか取り戻せたが、無惨にも既に絶命していた。
そんな我愛羅を生き返らせてくれたのは老齢の傀儡使い、チヨバア。
命を賭した禁術で犠牲は払ったものの、無事に帰還した我愛羅を確認した里は、歓喜に包まれた。

正真正銘我愛羅が里から受け入れられたと感じた瞬間だった。

そして木ノ葉の援軍が帰る時が来た。
古くから交流のあった砂の三姉兄弟が直々に見送るというので、万一に備え砦から見守っていた私たち暗部は、我愛羅の意外な行動を目にする。

「おい、我愛羅様が金髪と握手してるぞ」

「……うるさい。感動が半減するから黙ってて下さい」

我愛羅から目を離さず、飽くまで任務遂行を優先させ直立不動でからかう先輩の隣、私は潤んでいるのを悟られまいと必死に耐えていた。

我愛羅はうずまきナルトを、友と呼んだ。
そのナルトと握手をしたんだ。

泣きじゃくる私の手を取ってくれた我愛羅の、その手の温かさと力強さを知ったのは夕暮れのあの公園だった。
けれど、その重みを知ったのは、今、この瞬間。
我愛羅はやはりぎこちなく笑っていた。

- 23 -

prev / next


back

[ back to top ]


×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -