捧げ物 | ナノ


▼ かくれんぼの続き (6/10)

「木ノ葉崩しの大戦で、砂も多くの犠牲を払った。今砂の軍事力は著しく低下している。暗部の一人ひとりが、掛け替えのない戦力だ。
任務において敵の気配をいち早く察知。出来得る限りの戦闘回避。避ける事の出来ない戦闘は、敵の人員を正確に把握し先手を打つ。そしてその事によって、無駄な犠牲者を最小限に留める――
砂が必要としているのは、まさにそれが出来る人材だ。そしてそれが出来るのは、お前だけだ」

寡黙なはずの彼が発する言葉は、威厳に満ちていた。
まるで何も間違いはないと、安心させる響きがある。
しかしそれは買いかぶり過ぎというもの。
全ては私の能力が発揮出来ればの話。
結局は机上の空論の域を脱していない。

「失礼ですが、風影様は、私の何をご存知で?私は特出したものは何もない、ただの中忍です」

暗部に入隊なんか、絶対にしない。

頑なに意思を曲げない私に、風影様はふっと表情を緩め、笑顔のような、それでいて困っているような、そんな曖昧な顔を見せた。
そして一言、付け加えた言葉に、

「名前だけがいつも、オレを見つけてくれた」

私は体の中から沸き上がってくる興奮を抑え切れなかった。

「私を覚えているのですか!?」

口をついて出た問いに、風影様がしっかりと頷いた。

「人違いです。私はあなたの考えるような人物ではありません!」

「間違えるはずがない。まごうことなくお前だ」

「それならば尚、私を推薦される意味が分かりません。失礼を承知で申し上げますが、あなたは正気ですか?私があなたとの約束を守ると、本気でお思いですか!?」

私には……

風影様を、我愛羅様を見かける度、思い出す瞬間がある。
孤独を湛えたその双眸を真っすぐ自分に向け、すがるように伸ばした手。

『名前ちゃん、早く逃げなきゃ!』

そう言って手を引く“友達”に連れられ、私は彼の元から走り去った。
見捨てた。
裏切った。


そして私は、私を許せなくなった。


「期待に応えるような働きは出来ません。お願いです、分かって下さい。私にはあなたを裏切る気がしてならないのです。あの時の、ように――」

礼儀も何もない。
私はその場で泣き崩れた。

この人は、里を担う存在でありながら、なんと自覚のない事か。
引き換え私は自分が無力だと知っている。
誰かが本当に助けを欲した時、保身のために逃げる自分の弱さを自覚している。

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