捧げ物 | ナノ


▼ かくれんぼの続き (3/10)

一度勢いづいてしまうと案外強気な行動がとれてしまうもので。

あの後すぐ、議論が終着をみせる前に許しも乞わずに退出してきてしまった。
呆気にとられた上司は止める事すら忘れていて、風影様も風影様で、あの何とも言えない瞳を向けて見送っただけだった。
別に何を口にしたわけでもないのに、見られただけで責め立てられているような、そんな感覚が付き纏う。
だから私はあの人が苦手だ。

その目を見てしまうと、
私は自分を許す事が出来なくなる。






今日の任務は終わっている。
明日の打ち合わせも任務の帰りがてら確認済みだ。
報告書は提出したのかと気にかかり受け付けまで足を運んでみたけれど、結局それもむだ足に終わった。
私のチームメイトは手際がよく、ひいき目抜きにしても賞賛ものだ。
だから本当はそんな必要はないと分かっていた。
それでも何をしていいか分からなくて、何も考えたくないから自分の仕事が欲しくて、だからおかげで私はやるべく事を見失ってしまった。

だいたい私のチームメイトは二人とも有能すぎる。
任務で手を抜くような背信行為は一度もした事がないし、それどころか自分から進んで雑用を抱え込んでくるようなお人好し。
実力も最近ようやく中忍になれた私とは違い、二人はルーキー同然の二年目に合格。
ここ最近の任務の成功率が高かったのは、私一人の任務ではなくて、私の中忍昇格を機にまたスリーマンセルで活動するようになったからに他ならない。
私よりはよっぽど暗部に向いている。
なのに何をどう間違えたら今日みたいな修羅場に私が巻き込まれるのだろう。

疑問や苛立ちは増す一方――

こんな気持ちを家に持ち帰るのは気がひけて、ふらりと立ち寄ってみた公園は無人だった。
夕日が辺りを紅に染めている。

ここは私たちが下忍になる少し前に完成した公園だ。
遊んだ記憶はほとんどないけれど、最近同盟国の木ノ葉の教育システムを導入して本格的に運営され始めたアカデミーでは、生徒をここで遊ばせながら実践経験に入る前の準備をするらしい。
そこかしこに身を潜めるための遊具やベンチ、日中の強い陽射しから子ども達を守ってくれる木々が見られた。

ふと思い立って、木陰にあるブランコに腰掛けてみる。
幸い壊れる様子はない。
遠慮がちに足を蹴りだしこいでみると、小さく鎖が軋んだ音がした。

それにしても……

「やけに暗部が多いな」

主な勤務時間が昼間の私は、闇に紛れて任務を遂行する暗部とは滅多に顔を合わさない。
それがこんなに近くに気配を感じるのは、本日二度目だ。
稀な事が立て続けに二度も。
こうなると、さっきの風影室での一件が無関係だと思い込むのは難しい。

自分は反逆罪か何かで捕まるのだろうか。

頭の片隅でぼんやりそんな事を考えたが、逃げる態勢を取ったりはしない。
もう何もかもが、どうでもよかった。

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