ひだまり | ナノ


▼ 肉食系女子 (8/10)

「許すまじ、チョウジ」

「なに韻ふんでんだよ…」

素晴らしき早さでツッコミを入れたのはシカマルだった。

つい数分前のこと――自習時間にチョウジの後ろの席を取った私は、手にした一味をこっそり振りかけてやろうとしていた。
チョウジからポテチは奪えなくても、気づかれないよう何かを足してみることは出来る。
そう考えたのだが、相手の方が一枚上手だった。

「アレンジするなら…唐辛子系より、コショウの方が美味しいんじゃないかな?」

一味のフタが開いたか開いていないかのうちに、なぜ容器の中身まで言い当てられるというのだろうか。

「まあ、でも試しにかけてみるのもいいかもね」

振り返ったチョウジは、私の手から一味を抜き取った。
適量を振りかけてから実食。
うーんとうなってから、食べられなくはない、と言って一味を返却してきた。
そして食後に颯爽とトイレに向かったのだ。

「ねえ、シカマルさんー。チョウジの弱点ってなんなの?」

「そんなんオレに聞いたって、答えるわけねェだろ」

「だって一度くらいはぎゃふんと言わせたいじゃない!?」

いのとは違い、シカマルは私の食被害を間近で見てきた人物だ。
たまにものすごく悔しがっていると、口の中にチョコを放ってくれるいい人でもある。

「まあ、禁句ならあるっちゃあるが…」

そんな密談の最中、教室の一角がやけに騒がしくなった。
次の授業で変化の術のテストがあるのだが、その練習を真面目にやっている連中だった。
一人の男子がどうも思いどおりにいかないらしく、仲間にからかわれていたのだ。

「おっまえ、そんなんじゃイルカ先生に全然見えねェって」

「デブだ、デブだ。それじゃチョウジじゃねーか!」

まずいな、あれがチョウジの禁句だよ。
そうシカマルがつぶやいている間にも、仲間のはやし立てる声はやまなかった。

その男子も、そこで大人しく赤面して終わっておけば、私はまだ手を出さずに済んだだろう。
しかし殊更太ったチョウジに変化することで、仲間のウケを狙おうとした。
低レベルな笑いが教室中に響く。

「――ちょっと!!」

気がつくと、私は男子の胸ぐらを掴み、壁に押しつけていた。
驚いた相手は変化が解けてしまっている。

「な、なんだよ…お前また放課後呼び出されんぞ」

「自分がうまく変化できないからって、そういうことで誤魔化すもんじゃないわよ!」

一瞬は、私の勢いに気圧されたようだった。
しかしすぐにいやな笑いを口元に浮かべ、反撃を開始される。

「そういえば名前、昔けっこー太ってたもんな」

「そんなことは、いま関係ないでしょう!?」

「いやだって、同じデブとしてプライドが傷ついちゃったんだろ?そこはちゃんと謝んないとな…」

ごめんなさーい、ボクが悪かったでーす。
バカにしたように謝罪の言葉を口にされ、私は掴んでた胸ぐらをさらに高くあげた。
観衆からどよめきが起こる。
慌てた相手はいきなり早口に弁明した。

「…べつに悪気はなかったんだ。オレらにはチョウジがこれくらいデブに見えたってだけだろ!!」

「あんたらみんな、表面的なことしか見えてないよ」

お前もお前もお前も、そう言って笑っていた奴らを片端から睨みつけていく。

「いくら見た目がそっくりに変化できるようになっても、優しい人になりきることは絶対に無理だねっ」

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