▼ 肉食系女子 (6/10)
キャンペーン中の甘栗甘はさすが混みあっていた。
店内で食べるのはかなり待たされそうで、結局一皿三本のみたらし団子を包んでもらい、店の外で二人でシェアする。
包装紙についたタレを団子に絡めていのに手渡す。
垂れない程度にとどめるのがプロの気遣いだ。
「んーおいしー!」
頬張っただんごの弾力感。
甘すぎないタレは口の中に広がり幸せで満たしてくれて、これなら何本でも食べられそうだわと言っていると、それを聞きつけたお店の人が出てきた。
いい宣伝になりそうだから、とおまけの二本をこっそりくれる。
私はすかさず挙手をしてお茶を注文した。
お財布を取り出そうとしたいのには、さっきのポテチのお礼だからと伝える。
そして二本目を食べ終えると、お茶を待つ間に会話が再開した。
「でもそれだけなら、仲良しで終わりよね?」
「そこで終わってればね…」
話の続きはまだあった。
チョウジのふくよか発言に少し立ち直っていた私だったが、やはり痩身の女子に対する憧れは消えていなかった。
出来ることならもっとスリムになりたい。
そう打ち明けた私に、そしたらボクが協力してあげると言ってくれた。
そして言葉に違わず、チョウジの協力はめざましいものだった。
間食はお菓子でなく炭水化物をとること。
放課後に一気に食べるのではなく、一日を五食にするイメージで少しずつ食べること。
変化をやめるのは無理でも、家ではきちんと休むこと。
運動もしっかり取り入れること。
私は授業の合間に小さなおにぎりを口に放りこむようになり、たまに誘惑に負けてスナック菓子を買えばチョウジに没収される。
家で変化をやめたおかげか、姿見に映す自分の体型が気になりダイエットの意思は揺るがず、そればかりかアカデミーでの活動も楽になっていた。
放課後に屋上で会うたびに、私は目を輝かせて体重報告をしていた。
そしてとうとう目標体重まで落ちたとき、チョウジはでっぷり太ったブタの貯金箱を私に渡した。
「はい、これ。お祝いにあげるよ」
振っても音がならないくらいに、みっちりとお金が詰まっているようだった。
「え、どうしたの。こんなの受け取れないよ」
「今まで名前からもらってきたお菓子代だから、気にしないで」
どうやらチョウジは私からお菓子を奪うたびに、それと同額の貯金をしていたらしかった。
私の肉が減り、このブタを太らせたかと思うと、なかなか感慨深い。
「せっかくだから、それで好きな服を買うといいよ。そしたらリバウンドもしないんじゃないかな?」
そのアイディアは素敵に思えて、私はさっそく実行した。
「――そのお金で買った服が、今の私の忍服なの」
「それって一年前くらいから着てたわよね。すごい、キープ出来てるじゃない!」
「そうなんだよォ」
照れて頭をかくと、手に持ったままの串が髪の毛についた。
いのに気づかれる前に処理しようと思ったが、彼女はめざとくウェットティッシュを差しだしていた。
私はずっとワンピースで体型を隠していた。
それが一年前から、腕腹足を露出するようになった。
「ここまではいい話ね」
いのは私の髪を確認しながら言う。
「そうなんだよォ…」
私は力なくうなずいた。
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