時空の死神 | ナノ


▼ 6.痛みに誓う決意 (12/13)

「ずいぶんきついこと言うねェ」

見えている方の目を細めると、言い過ぎたと思ったのか、ソラが少し小さくなった。

「カカシ先生が私の身を案じてくるているのは分かってます。でも――」

「お前がいなけりゃ上手くいく任務、なんだろ」

「…はい」

死ぬかもしれないのに、よく信じられるものだ。
ソラもその根拠のなさには気づいているようで、カカシを見上げる瞳はまるで小動物のようだった。

判断に迷うところだなあ、とカカシは空を仰ぎ見た。
今となっては火影の面前でのソラの態度の意味がよく分かる。
ソラは未来を知っていた。
死ぬかも知れないと承知で、仲間を信じ、希望をつかみ取ろうとした。
それを里へ帰るようなことにでもなれば、完璧な裏切りと見なされるだろう。

「分かった。オレもソラを信じるよ」

最終的に、先ほどの戦闘回避能力を評価した。
根負けしたカカシがソラの頭に手をおくと、ぐしゃっと撫でる。
手に柔らかい髪の感触が伝わった。

「へ、へへへへ…なんかよく分かんねーけど、任務続行だッ!」

締めくくりにナルトが叫ぶが、サクラはまだ混乱気味のようだ。

「ちょ、ちょっと待って、話が全然見えないんだけど…」

無理もない。
今の今まで犬猿の仲を装っていたのが、口を開いたら自分たちの知らない話を示し合わせたかのようにしゃべりだす。
端から見れば意味が分からなかっただろう。
お互い探り合いが成功していなければ、成り立たなかった会話だ。

「お前ら何を隠してやがる。それが分かんねェとこっちも動きづれーんだよ」

「そ、そうよ」

「んー…ごめんなー。話したいのは山々なんだけど、これ以上話が長引くと……ナルト、景気よく毒血を抜くのはいいが、それ以上は出血多量で死ぬぞー。早く止めないとヤバイぞ、マジで」

威勢のよかったナルトが、面白いくらい一気に青ざめる。

「ぬぁーあっ、ダメ!それダメ!!ダメダメ、こんなんで死ねるかってばよーッ」

「ちょっと手、見せてみろ?」

「あ゛ーいーやぁー!!」

「ナルトー、あんたって自虐的性格ねー。それってマゾよォ?」

ナルトの左手を取ったカカシの目が細められる。
ソラとの会話に時間をとられたとはいえ、いくらなんでも早すぎる。
ナルトの傷口はもう治りかけていた。

「あのさあのさ…」

「ん?」

「オレってば、大丈夫?先生ってば、やけに真顔…」

心配そうなナルトに、カカシは携帯していた包帯を巻く。

「ま、大丈夫だろう」

あれだけの血飛沫だったのだ。
こんなに小さな傷口だったはずがない。

――九尾の力か。

四代目の封印が施されていたが、それが十二年の間に弱まってしまったか。

ナルトにソラ。
二つの不安要素を抱え、カカシは密かに気を引き締め直した。
この任務、簡単に終わりそうもない。

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